研究課題/領域番号 |
23310064
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
林 真至 神戸大学, 工学研究科, 教授 (50107348)
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キーワード | ナノ構造 / 微粒子 / 蛍光増強 / 有機分子 / 近接場 |
研究概要 |
本年度は、研究実施計画に記載した、1)増強機能を持つナノ構造作製、2)発光増強の精密測定、3)理論との比較、に沿って研究を推進した。1)に関しては、従来のガス中蒸発微粒子層上に堆積した色素分子層からなる試料系に加えて、微粒子と色素分子を同時に含むPMMAコンポジット膜の作製を試み、安定な試料系を得ることに成功した。また、微粒子としてはGaPのみならず、BaSO_4微粒子による増強実験も行った。さらに、金属-誘電体-金属(MIM)構造として、DCM分子を誘電体層中に埋め込んだ試料系を作成した。2)に関しては、蛍光励起スペクトルの測定を精力的に行い、微粒子試料系では散乱光スペクトルの測定も行った。3)に関しては、微粒子系についてのMie散乱理論との比較、MIM構造については単一発光ダイポールの発光計算との比較を行った。これらの測定及び理論計算により主として以下の事が明らかになった。 1.非金属微粒子による発光増強:従来のGaP微粒子に加えて、BaSO_4微粒子を用いても蛍光増強が得られることが判明した。増強度は、現在の所60倍程度であるが、さらに試料の調整で向上するものと予想される。また、GaPでもNaSO_4でも、蛍光増強度の励起スペクトルと光散乱スペクトルの間に強い相関がみられた。Mie理論による計算結果を考慮すると、このことは表面電場増強によって蛍光励起効率が高くなったことを示唆している。 II.MIM構造を用いた発光増強:MIM構造では、反対称性表面プラズモン及び対称性表面プラズモンが存在する。今回の試料系では、対称性表面プラズモンを介してDCM分子を励起すると励起効率が数倍になり、さらに反対称表面プラズモンを介して発光させると発光強度が数倍に増強することが示された。この実験結果は理論計算の結果と良い一致がみられた。 以上の成果は、クエンチングなしでの増強メカニズムを解明し、さらに高い蛍光増強度を達成するのに重要な指針を与えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に沿って研究が進展しており、3年計画の初年度としては、新しい現象も見いだされている。ただ、蛍光寿命の測定が行われておらず、今後測定に最適な試料系をいち早く見出す必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の成果を踏まえながら、さらに蛍光増強度を増大させること、励起過程のみならず、発光過程での増強メカニズムを明らかにすることにより、最終目的である約1000倍の増強度を目指す。
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