平成25年度は,金属原子サイズ接点の高周波特性を測定する実験を行った.当初液体ヘリウム温度で測定を行う予定であったが,接点のself-breakingを用いると室温でも原子サイズ接点を作製・保持できることが判明したため,測定は室温で行った. 最初にAu接点を対象とした測定を行った.MCBJ法により10G0~1G0接点(1G0接点は単原子接点)を作製・保持し,ネットワークアナライザによりSパラメータS21の位相と絶対値を1GHzまで測定した.S21の位相は低周波領域では0である.当初位相が数MHz程度から増加し,増加し始める周波数は接点コンダクタンスに依存していた.これは接点周りの浮遊容量の影響であると考えられ,改良のためMCBJ基板をポリイミド板に変更した.これにより位相が増加し始める周波数は20MHz付近まで上昇した.この位相変化はコンダクタンス依存性が無く,10G0~1G0接点で全く同じ変化が観測されたことから,位相変化は接点以外の要因によるものであり,接点本来の位相は0のまま変化していないと考えられる.その後の追加実験により,実際にS21の位相が1GHz付近まで0であることを確認している.従ってAuの10G0~1G0接点は,1GHzまでの周波数領域まで純抵抗として振舞うことがわかる. Pt接点に対する測定も同様のデータを示し,S21の位相は接点コンダクタンスに関わらず全く同じ周波数変化を示した.このことから,Auとは接点の電子透過率が異なるPtの場合にも,原子サイズ接点はRF領域では純抵抗であることが明らかになった. また,接点の「1準位モデル」および「メゾスコピック容量モデル」に基づいて接点のアドミッタンスの評価を行い,どちらのモデルにおいても,金属の原子サイズ接点はRF領域では純抵抗であるという結果を得ている.この理論結果は,今回の測定結果と良く一致している.
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