研究課題/領域番号 |
23310069
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西井 準治 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (60357697)
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研究分担者 |
西山 宏昭 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (80403153)
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キーワード | 表面プラズモン / 金属ナノ構造 / スパッタ法 / 蒸着法 / プラズモン共鳴 / 表面モルフォロジー |
研究概要 |
本研究では、金属ナノ構造に駆動機構を導入することで、外部変調可能なプラズモン増強場を創製することを目的とし、平成23年度は、材料選択を含む素子構造の最適化、デバイス作製技術および光学特性評価に取り組んだ。 1.電場解析を用いた構造の最適化手法の検討 厳密結合波解析を用いた金属ナノ構造の最適化を行った。基板と媒質の屈折率が近い場合、長距離伝搬モードと呼ばれる鋭い共鳴ピークが観測されることが確認できた。今後、ブリッジ構造を形成すれば、その上下が空気層になるため、同様なモードが現れると期待される。 2.金属ナノ構造の作製技術開発 構造設計から見積られた最適な周期、膜厚の金属ナノ構造を、微細加工と真空成膜で作製した。石英基板表面に二光束干渉露光とドライエッチングで1次元ナノ構造を形成し、その表面に電子線蒸着法あるいはスパッタ法で金あるいは銀を30~100nmの範囲の種々の膜厚で成膜した。 3.金属ナノ構造の光学特性評価 金属ナノ構造の表面側および裏面側からプラズモン励起できる光学評価装置を作製した。金属ナノ構造を形成した基板を常に水平に保ち、その表面にマッチングオイル等の液体を塗布した状態でプラズモン共鳴状態を観測できる。本装置で、スパッタ法で作製した銀薄膜のナノ構造を評価したところ、厳密結合波解析によるシミュレーション通りの長距離伝搬モードに由来するピークが観測された。一方、電子線蒸着法で作製した膜では、その様なモードが観測されなかった。その原因を原子間力顕微鏡等で詳細に調べたところ、表面モルフォロジーの影響であることが示唆された。すなわち、成膜速度を極限まで(~0.01nm/秒)で低下させても、蒸着膜の算術平均粗さ(Ra)は5nm以上であったが、スパッタ膜の場合、特にヘリコンスパッタ膜においては、Raが5nm以下であり、結果的にプラズモン伝搬の散乱損失が抑えられ、長距離伝搬モードが観測できたと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、ナノギャップを形成するまにでには至らなかったが、ナノ構造を形成した金属薄膜の表面モルフォロジーと伝搬型プラズモン共鳴特性との相関を詳細に調べ、理論計算と実験結果とがよく一致することを確認できた。本成果は、今後、基板と金属薄膜との間にナノギャップを形成した動的プラズモン増強場の創製において極めて重要である。
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今後の研究の推進方策 |
時間領域差分法および厳密結合波解析を用いたギャップ構造とプラズモン共鳴特性との相関を定量的に解析する。特に、ギャップ構造形成のためのプロセスの検討を行う。数十ナノメートルのギャップを高精度に形成するために、成膜とエッチングプロセスの選択と最適化を進める。また、金属針状構造近傍の電界分布を解析し、電場増強度の制御性を検討する。さらに、平成23年度に構築した金属ナノ構造の表面側および基板側からプラズモン励起特性評価装置を改造し、ナノギャップ間隔を制御した状態での共鳴特性評価を可能にする。
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