研究課題/領域番号 |
23310069
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西井 準治 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (60357697)
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研究分担者 |
西山 宏昭 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (80403153)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | プラズモン / 回折格子 / 長距離伝搬モード / オットー配置 |
研究概要 |
ナノギャップを有する単層の金属周期構造および高い電場増強効果が期待できる金属針状構造を念頭に、電場解析シミュレータを用いた構造の最適化とデバイス作製技術の開発およびその特性評価に取り組んだ。その結果、金を用いたダイアフラム型回折格子の作製に成功し、その特性を評価したところ、外部場による回折格子の微小な変位に起因するプラズモン共鳴状態の変化がシミュレーション結果とよく一致することが実証された。 また、伝搬型プラズモン共鳴において、スライドガラス基板(屈折率1.51)と金属薄膜の間に屈折率が1.32のフッ素系樹脂を挿入することで、水中(屈折率1.31)において長距離伝搬モード(LRSP)のプラズモンを励起できた。LRSPは、金属表面からの電場の浸み出し長が金属片面の伝搬(シングルインターフェースモード:SIモード)よりも長く、その強度も強いことから、高感度センシングへの応用が期待されている。現時点でのLRSPディップの半値幅は、文献で報告されている自立金属薄膜よりも広く伝搬損失が高いと思われる。今後は、低屈折率層や金属薄膜の形成方法をさらに改善し、低損失LRSPモードの励起を実現し、センサーへの応用を目指す。 さらに、これまでの金、銀に代わってパラジウムでのプラズモン励起を試みている。パラジウム表面にプラズモン励起できれば高感度な水素センシング機能が発現する。既に数報の文献が公表されているが、いずれの場合もプラズモン励起効率が低い。本研究では、オットー配置での励起を試みており、0.1%H2(99.9%N2)のセンシングに成功している。本課題に関しても、今後は励起効率向上のためのデバイス構成および作製プロセスの改善を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
外部場による回折格子の微小な変位に起因するプラズモン共鳴状態の変化がシミュレーション結果とよく一致することが実証されたこと、低屈折率樹脂の表面に金属薄膜を形成して長距離伝搬モードの励起に成功したこと、等の成果より、当初の目標をほぼ達成した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの金および銀に加えてパラジウムを用いたプラズモン素子を作製し、水素ガスのセンシング機能を確認すると共に、ダイヤフラム構造化による外部変調の可能性を検討する。パラジウムはd電子局在性が強くプラズモン共鳴を励起しにくい金属であるが、添加物や薄膜プロセスおよびプラズモンデバイス構造を最適化して水素吸蔵・放出特性とプラズモン共鳴特性の両者が最適化された高感度センシング機能の発現を目指す。 まず、オットー配置、クレッチマン配置および回折格子の内で励起光が最も効率よくプラズモン結合するデバイス構造を決定する。これらの構造は、当該研究室が所有する成膜装置および微細加工装置によって作製可能である。また、プラズモン励起には波長633nmのHe-Neレーザー、850nm、980nmのレーザーダイオードを使用する。 次に、パラジウムプラズモンデバイスの水素耐久性向上のための添加物効果と水素検出感度との相関を定量化する。添加物としては、ニッケル、コバルト、マンガンなどを検討する。さらに、水素検出高感度化のための能動化について検討する。本課題の主目的である金属と基板間にナノギャップを形成する方法に加えて、基板とパラジウム間にフッ素系低屈折率樹脂を成膜してナノギャップ空間と同等の効果が発現する可能性を検証する。 以上の本研究を通して、従来、パッシブな機能探索が中心であったプラズモニクス分野において、プラズモン共鳴条件を外部から可変制御するための基盤技術を構築する。
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