研究概要 |
【研究目的】の「応募者らが最近発見した『常温電界効果型クーロン振動現象(Mod.Phys.Lett.(2010))』を体系化することで、半導体代替次世代の単電子トンネリングの実用化素子を開拓する」に対し、H24年度の研究実施目標は【Ni-Nb-Zr-H系アモルファス合金の核磁気共鳴研究】と【GAFETの磁気誘起クーロン効果検証】であった。 本年度は(Ni0.42Nb0.28Zr0.3)90H10アモルファス合金中のプロトンの動的挙動を直接的に観察するため、液体He温度から常温までの核スピン―格子緩和率、核スピン―スピン緩和率を計測し、プロトンは液体He温度から常温まで金属クラスターの間を拡散し、常温近傍からクラスター内のプロトンが動き始めることを突き止めた(Niki et al., J. Appl. Phys., 111, 124308 (2012))。またトンネリングの為の空孔のサイズと分布を明確にするため、陽電子消滅実験を行った。その結果、空孔のサイズは結晶金属中のものより小さく均一に分散していることが分かった(Fukuhara, Appl. Phys. Lett., 100, 093102 (2012))。次に、金線のソース、ドレイン電極をスポット溶接し、上部にAl2O3酸化物を20μm被覆させたアモルファス合金電界効果型トランジスタ(GAFET)を作成し、常温下-10~+10 mV範囲の直流バッテリー電源により~2T間を0.2 Tごとに変化させてId-Vg-B特性を計測した。その結果、0-10mV間及び1.2-1.7T間でクーロン振動とAB効果が重叠した常温ファノ効果が生じた。今までの報告ではAlGaAs/CaAsで30mKの極低温でしか得られなかったけれども、本研究結果は量子コンピュータへの道を拓く快挙である。
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