研究課題/領域番号 |
23310071
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鈴木 誠 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60282109)
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研究分担者 |
森本 展行 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00313263)
和沢 鉄一 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究支援者 (80359851)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 局所粘度計測 / 蛍光偏光解消 / 回転相関時間 / ハイパーモバイル水が / アクチンフィラメント / 蛍光異方性 / 水和水 / 水和水の粘度 |
研究概要 |
ナノシステムの摺動性材料を開発する上で、摺動部材間の間隙を満たす水層の粘度を計測することは重要な課題である。ナノシステム材料としてタンパク質は有望な材料であるが、タンパク質表面に接する限られたナノスペースにある水の粘度を局所的に直接測定しようとする試みはまだない。ここで提案する研究は、タンパク質(ここではアクチン)表面に可変リンカー長の蛍光分子を結合し、パルスレーザーで励起し、蛍光偏光解消を時間分解で測定することにより、蛍光分子の回転相関時間を求め、対象物表面に結合した蛍光分子を取り囲むナノボリュームの水の粘度を測定する方法の確立を目的とする。 研究実施内容:本研究ではタンパク質表面に可変リンカ―長の蛍光分子を結合し、パルスレーザーで励起し、蛍光偏光解消を時間分解測定を行ってきた。これまでの誘電緩和測定によれば、アクチンフィラメント表面にハイパーモバイル水が厚さ1nm程度存在することが予想されるので、アクチンに蛍光色素を結合し、水和層の中から外に至る水の粘度変化を測定することをめざした。具体的には、 ・蛍光偏光解消法による回転相関時間測定システムを構築した。 ・対象とするタンパク質分子としてアクチンを選び、ハイパーモバイル水が存在すると予想される部位(アクチンCys374等)に蛍光色素を導入した。これまでCy3、rhodamin 6GにシステインのSHに結合するマレイミド基を導入した。そのとき、色素部と反応基間のリンカーをポリエチレングリコ―ルPEGをリンカーとする長さ0.5nm~2nmの蛍光色素を作成した。 ・蛍光寿命、蛍光異方性を作成した各色素に対して測定し基本データを得た。 今後、作成した蛍光色素をタンパク質に結合し、タンパク質表面の粘度測定を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、タンパク質(ここではアクチン)表面に可変リンカー長の蛍光分子を結合し、パルスレーザーで励起し、蛍光偏光解消を時間分解で測定することにより、蛍光分子の回転相関時間を求め、対象物表面に結合した蛍光分子を取り囲むナノボリュームの水の粘度を測定する方法の確立を目的としている。これまでの達成度は以下の通り。 ・蛍光色素作成の面では、蛍光分子(Cy3、rhodamin 6G)にシステインのSHに結合するマレイミド基を導入し、色素部と反応基間のリンカーをポリエチレングリコ―ルPEGをリンカーとする長さ0.5nm~2nmの蛍光色素を作成することができ、ほぼ計画通り進んでいる。 ・蛍光偏光解消法による回転相関時間測定システムを構築した。これらの蛍光色素の回転相関時間を求めるために、蛍光色素の蛍光寿命と、パルスレーザーで励起したときの蛍光偏光解消を時間分解測定を行ってきた。その結果、小さな分子の回転は1nsを切る応答を検出しなければならないため、Cy3系の色素で回転相関時間の評価を行うことができた。 ・アクチンのCys374にこれらの蛍光色素を結合し、水和層の中から外に至る水の粘度変化を測定することをめざした。しかしながら、リンカー長が短い場合アクチン表面にトラップされタンパク質分子の回転相関時間に近い値を得た。またリンカー長が中程度の場合、溶媒の粘度に対応する回転相関時間を得たが、さらにリンカー長を長くすると、再びタンパク質表面にトラップされることを示唆する結果を得た。 以上のように、ほぼ計画通り順調に進展しているが、タンパク質表面との相互作用についてはさらに蛍光色素の選定あるいは化学修飾等の工夫をとりいれることが求められている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の3年目は最終年度になるが、次の2つの点で目標に向け研究を進めていく。 ・引き続き蛍光色素としてタンパク質(アクチンは中性pHでは負に荷電)との相互作用の少ない負に荷電した色素を用いる。また、リンカーとしてフレキシブルさの異なる分子鎖も検討対象に入れる。 ・蛍光偏光解消を測定する上で、パルスレーザーを用いる以外に、CWレーザーを高周波変調することで蛍光色素の回転相関時間を評価する手法を示した研究が報告されたので、本研究でも対応可能な技術であることから、その方法を発展させる取り組みを進めている。これまでにない要素技術を開発しつつあり、小さな蛍光分子の回転相関時間計測にも対応できる見通しがでてきた。この方法を展開していく予定である。
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