研究課題/領域番号 |
23310072
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
石川 謙 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (10176159)
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キーワード | 液晶 / 光デバイス / ナノ構造 / 自発構造形成 / 構造制御 / メゾスコピック構造 |
研究概要 |
液晶の中には光の波長程度のナノメートルスケールの自発的な1次元周期構造を有する「ナノ構造液晶」とも言うべき状態がある。本研究ではこれらのナノ構造液晶を対象物質とし、構造に未解明の点が残る液晶群についてはその解明を行い、その上で、これらのナノ構造液晶を微小空間に閉じ込めて、周期構造の次元性を制御し、新たな表示デバイスの原理を構築することを目的とし、本年度は以下の3点の研究を行った。 (1)ナノ構1造液晶のうち、強誘電SmC相と反強誘電SmCA相間の連続転移を示す系において、未解明であった転移中間状態の解明を目的とし、電場誘起微小複屈折変化と特性反射測定を同時に行える実験装置を構築し、1/100°の温度精度をもって、中間状態の詳細な検討を行った。その結果、周期構造がアモルファス化するような中間状態が出現することを実験的に確認した。この中間状態は連続的な階調変化に適しており、応用上興味深い特性であることが確認された。 (2)極性と周期構造を有し電場による光学応答を示すディスコティック液晶について、反転電流測定、非線形分光測定により極性状態を、非線形分光と偏光赤外分光の入射角度依存性より分子パッキングを解析し、逆平行に配置した分子が積層する構造であることを明らかにするとともに、他の液晶では見られない機構で光学応答が生じていることを明らかにした。 (3)構造の分かっているコレステリック液晶について、周期構造の異なるものを系統的に用意し、微小空間に閉じ込めた場合の構造について、閉じ込めにより生じる欠陥構造と、閉じ込めサイズおよび周期的構造との関連についての知見を集積した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的のうち、構造が未解明であったSmC、SmCA転移中間状態と極性ディスコチック液晶に関しては、構造解明を行い、さらにSmC液晶で新たに見いだされた構造が良好な表示特性を示しうることを確認した。閉じ込めによる構造制御については、ある程度の知見が得られつつあるが、界面状態との関連についての知見のさらなる集積が必要であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
極性スメクチック液晶に関しては、新たに見いだしたアモルファス的な構造について、これまでの測定に加えて、非線形分光を用いた極性状態の評価を加えて、より詳細な構造を明らかにする。 コレステリック液晶等の構造が解明されているナノ構造液晶に関しては、微小構造による構造制御手法を確立するために、界面における配向規制力について、当初の計画に従って非線形分光手法による界面配向分布の測定を通して知見の集積を行う。 上記の研究と平行して表示デバイスを意識した電気光学デバイスを作製し応答特性の評価を行う。
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