研究概要 |
H23年度当初の研究目的は,(1)オーダーN型実空間密度汎関数コードの開発,(2)ハイブリッド量子古典法への外部電場の取り入れ法の開発,に大別できる.(1)に関しては,Kohn-Sham型密度度汎関数法の実空間グリッド表現の枠組みで,対象系をオーバーラップした複数領域に分割し,統一フェルミレベルの下で領域毎に計算した電子密度を合成して全密度を得る,分割統治型の実空間グリッド密度汎関数法(DC-RGDFT)の定式化に成功した.その際,総計算量を少なくする為に,比較的薄いオーバーラップであっても実用に使える精度となるように,各領域の電子密度を得る為のKohn-Sham型ハミルトニアン方程式に対して,電子相関効果を含めた適切なembedポテンシャルと全電子密度からずれを補正する働きをするdensity-templateポテンシャルを,それぞれ適用する空間を分けて導入した.また,開発したコードがオーダーNでスケールすることを.複数のスパコンに関して千コアレベルを使用する大規模ベンチマークテストにより実証した.(2)に関しては,量子計算に実空間グリッド密度汎関数法(RGDFT)コードを使ったハイブリッド量子古典コードに対して一様な外部電場を導入し,実際にLiイオン電池の負極として用いられているグラファイト中のLiイオンの熱拡散係数がその炭素層に垂直な方向の交流電場の付与によって数倍も増大しうること等をシミュレーションにより示した.電極中のLi拡散過程は,Liイオン電池の出力性能の律速過程であり,この知見はLiイオンの性能向上のために重要である.その他,シミュレーション結果を分かり易く可視化するソフトの開発に成功し,ハイブリッド法での分子群の粗視化に関連して,粗視化分子のダイナミクス計算アルゴリズムも新たに提案した.
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