研究課題/領域番号 |
23310075
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
磯田 正二 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 研究員 (00168288)
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研究分担者 |
高野 幹夫 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 特定拠点教授 (70068138)
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キーワード | 可視化 / 細胞・組織 / メゾスコピック系 |
研究概要 |
本研究の目的は、無染色の生体試料の高分解能電子顕微鏡解析のための方法論を提案することにあり、さまざまな生体試料解析への応用の基盤技術を実証することにある。本研究では、一つの応用分野として、ナノ磁気微粒子の生体への伝達集積系の解析研究を進める。従来は、その伝達分布を電子顕微鏡で調べる際には、生体組織を何らかの方法で染色することで微粒子と生体の構造的な相互関係を解析してきた。しかし染色の結果、試料のナノスケール汚染を引き起こすこともあり改良すべき点であった。この問題の解決法の一つとして、極低温走査型透過電子顕微鏡暗視野法(ADF-STEM)による無染色解析方法を提案する。本方法を用いて、磁気微粒子の生体への伝達機構を検討する。 初年度である平成23年度は以下の3項目について準備的研究を進めた。(1)磁気微粒子の作成;シリカでコーティングされた鉄磁気微粒子の合成を行った。これと平行して別種の親和性を確立するために金修飾を開始した。(2)常温での無染色電顕観察;切片を作製することなく全細胞観察の可能性を探索した。その結果ADF-STEMの特殊条件下で、細胞核を含む厚い試料においても観察できることを証明できた。(3)極低温電顕像観察の準備研究;急速凍結装置を準備し、細胞の概要を保持したまま凍結するための凍結条件の大枠を決定できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
鉄磁気微粒子の作成については研究分担者の努力で目標以上の達成度であり、計画を前倒して微粒子の細胞への取り込みも開始することができた。また、常温での無染色電顕観察については、全細胞の観察でADF-STEMの有効性の一部を実証できた。一方、極低温電顕像観察では予定した装置を購入できずに借用することになり、利便性に欠け若干の遅れが発生した。しかし、全体としては、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
細胞への鉄微粒子の合成と細胞への取り込みについて、国内外の関係研究者からの意見を聴取したことで研究を加速できた。本研究のような材料と生体の融合研究においては、今後もさまざまな分野の研究者との交流を深める必要があると認識している。クライオトランスファー装置を購入できなかったことから、同装置を関係研究グループから借用して研究を進めることとした。昨年度は一カ所の研究グループからの借用で研究を進めたが、今年度は二カ所からの借用を計画していてより円滑な計画達成を目指す。更に他種資金の獲得を模索し専用の装置を準備できるように努める。
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