研究課題
生体への外部粒子の伝達機構を考える上で、ドラッグデリバリーシステムに代表的にみられるように、その伝達経路と最終集積部位の同定は生体と粒子系の相互作用の理解に不可欠である。本研究の目的は伝達経路の直接的な空間分布解析を実現する生体試料の高分解能電子顕微鏡解析のための方法論を提案することにある。特に、デリバリーやハイパーサーミアへの応用を視野に入れて、ナノ磁気微粒子の生体への伝達集積系の解析研究を進めた。従来は、電子顕微鏡によるコントラスト生成が困難である生体組織を何らかの方法で染色することで、微粒子と生体の構造的な相互関係を解析してきた。しかし染色の結果、試料のナノスケール汚染変形を引き起こすこともあり改良すべき点であった。この問題の解決法の一つとして無染色での観察が必要で、ここに極低温走査型透過電子顕微鏡暗視野法(ADF-STEM) による無染色解析方法を提案した。本方法を用いて、磁気微粒子の細胞中での捕食分布状態を検討した。具体的には、(1) 鉄磁気微粒子の作成と細胞への導入。細胞内への外部からの材料の伝達機構を電子顕微鏡的に解析するために、伝達される材料として酸化鉄磁性微粒子材料を選択した。(2) 磁性粒子を導入した細胞試料の無染色電顕観察。微粒子の細胞内での局在化をADF-STEM法により解析するために、凍結乾燥した細胞試料の無染色での構造観察と、生体状態をより保持していると考えられる急速凍結した細胞試料の観察を行った。結果、ADF-STEM法は生体試料の無染色観察にも有効な方法であることを示すことができた。更に、高分子・タンパク・繊維などのソフトマテリアルと呼ばれる材料のさまざまな構造体解析への応用を試み、定量性の高いイメージング方法としてADF-STEMの観察方法を評価した。これらの成果を国際学会の招待講演として発表し、国際科学雑誌の論文として公表し、関連分野の進展に貢献できた。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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