研究課題/領域番号 |
23310079
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
飯田 琢也 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 講師 (10405350)
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研究分担者 |
伊都 将司 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (10372632)
床波 志保 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 講師 (60535491)
児島 千恵 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 講師 (50405346)
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キーワード | 光物性 / 光ピンセット / 計測工学 / 分析科学 / ナノバイオ |
研究概要 |
光照射や化学的表面修飾によるナノ粒子の組織化・機能制御の原理を解明し、新しい光駆動型バイオセンサーの開拓や、光発熱挙動を示す医療用ナノ複合体の設計指針確立へと展開することが本研究の目的である。 今年度は、代表者Gで開発した「光誘起力ナノダイナミクス法」を用いて、様々な条件の光照射下での金属ナノ粒子集団の運動を系統的に解明した(成果の一部が大学HPや米国メディアVertical News誌で紹介された)。その一例として、偏光分布を適切にデザインしたレーザー光を用いれば金属ナノ粒子を円環状に高密度配列でき、広帯域かつ様々な方向の偏光を非常に強く散乱する構造体が作製できる可能性を示した。この機構は、光電磁場を介した粒子間の相互作用により発現する超放射に由来しており、光駆動型バイオセンサーの検出感度向上に役立つと考える。 現在、検証実験に備え、光制御-分光Gでは上記ビームの発生装置を導入して調整に成功し、センサー応用Gでは表面電荷を制御された金属ナノ粒子の準備を完了している。また、代表者Gでは高密度金属ナノ粒子集積構造の光応答を超高速に計算できる「クラスターDDA」と呼ばれる新しい近似手法も開発した。この手法を用いれば、条件次第では近似無し場合の3000倍近い計算速度が実現でき、複数の金属ナノ粒子固定化ビーズに働く光誘起力の評価にも成功している。特に、センサー応用Gで作製した高密度金属ナノ粒子集積構造の光応答の実験結果を良く再現できることを示し、開発中の光バイオセンサーの仕組や検出限界に関する重要な知見も得た。さらに、医療応用Gとの連携により、近赤外の波長域で高効率の光発熱効果を示す金属ナノ粒子集合体の設計のための理論手法の開発に成功した。また、この手法により、金属ナノ粒子中に閉じ込められた局在表面プラズモンの鏡像効果が長波長域での光発熱効果増強に重要な役割を果たすことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「研究実績の概要」に記載したように初年度の交付申請書に記載した内容は、ほぼ全て達成した。また、具体的内容は未発表のためここでは割愛するが、理論で予言された効果の一部を裏付ける初期の実験データも得られ始め、予想外の実験結果も得られ始めており、当初計画以上に進展していると言える。さらに、新しい展開として、照射光の時空間的特性を適切に変調したモデル計算により、常温水中での「熱揺らぎ」の効果を積極的に用いた新しいナノ分析技術の知見も得られた。代表者主導の定期的な合同セミナーや、各グループ間の密接な交流を通じて分野を超えた相互理解も深まり、申請当初よりも目指すべきゴールの輪郭が極めて明瞭になったと感じている。
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今後の研究の推進方策 |
代表者Gで開発してきた「光誘起力ナノ動力学法」や「クラスターDDA法」を駆使して、実際の実験に近い条件を探索する。また、光照射下でのナノ粒子の組織化プロセスを別の角度から解釈するためにモンテカルロ法を援用した手法開発も行う。特に、理論の検証による目的達成のためにはマンパワーの拡充が重要課題であるため、次年度は代表者Gで最小構成の光ピンセットを導入し、同所属のセンサー応用Gから表面修飾した金属ナノ粒子を速やかに提供を受け、組織化制御の条件出しを行う。この一連の作業により、光制御-分光Gで推進しているメインの検証実験を後方支援する。さらに、医療応用Gで開発を進めている細胞培養基材の光発熱効果による物性変化を光制御-分光Gの蛍光相関分光法を駆使してミクロな性能評価を行い、これまでのマクロな計測結果と比較する。
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