研究課題/領域番号 |
23310079
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
飯田 琢也 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 講師 (10405350)
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研究分担者 |
伊都 将司 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (10372632)
床波 志保 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 講師 (60535491)
児島 千恵 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 講師 (50405346)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 光物性 / 光ピンセット / 計測工学 / 分析科学 / ナノバイオ |
研究概要 |
前年度に引き続き、代表者Gで開発した「光誘起力ナノ動力学法」を用いた理論研究を行い、従来の物質の三態と類似した金属ナノ粒子複合体の気体状-液体状-固体状の状態を集光レーザーの強度を変化させることで制御できる可能性を明らかにした[Phys. Stat. Sol. (c)のカバーに選抜]。また、多重光ポテンシャルの空間的対称性を時間的に変化させることで、従来は光操作の大敵であった熱揺らぎの効果を利用して数nm程度の精度でナノ粒子の分離分析を可能とする新原理を解明した[米国化学会の一流誌Nano Lett.に掲載、大学HP、新聞等でも紹介]。さらに、新規導入した光ピンセットを用いて、センサー応用Gより提供を受けた金属ナノ粒子複合体と生体物質の光集積化に関する初歩段階の成果を得た。 また、光制御-分光Gでは、前年度に導入した軸対称ベクトルビームを用いて、代表者らの理論で予言された高い回転対称性を有する金属ナノ粒子複合体形成の実験検証を行った。粒径数十nmの金ナノ粒子の場合、粒子間距離が入射光の偏光に依存し、誘起分極を介した粒子間相互作用を偏光で制御できることを実証した。センサー応用Gでは、上記のサンプルの調製・提供の他にも金属ナノ粒子複合体の光散乱が複合体の形成に用いるバインダー分子のサイズによって大きく変化することも暗視野顕微分光によって解明し、本研究で目指す光駆動型バイオセンサーの基礎原理構築のための重要な知見を得た。さらに、医療応用Gでは、理論によって最適な光熱変換特性をもつと見積もられた金ナノ粒子を実験的に作製し、これを添加した光応答性細胞培養基材を作製した。そして、光照射による細胞基材の物性変化について検討した。そして、この基材上で細胞培養を行い、直径3mmの光照射部位における選択的な細胞剥離に成功した[新聞等で紹介]。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の交付申請書に記載した内容は、ほぼ全て達成した。また、外部では未発表のため詳細はここでは割愛するが、代表者Gで新規導入した光ピンセットを用いて、センサー応用Gより提供を受けたプローブナノ粒子の光集積現象を利用して被検出分子の高感度特異検出ができる可能性を示した。また、金属ナノ粒子固定化ビーズの光発熱効果による熱凝固性物質の検出にも成功した。また、光制御-分光Gにおいて代表者らの理論で予言された軸対称ベクトルビームによるリング状金属ナノ粒子複合体形成の実験検証が極めて順調に進展しており、ナノロッド等の光学的異方性を有するプラズモニック粒子の光選別、配向制御、空間パターニングに成功した。さらに、作製したナノ構造が出発物質であるナノ粒子の光学応答と全く異なるブロードなスペクトルを呈する事を見出し、光捕集系構築等へのさらなる展開に関して有望な知見を得ている。さらに、医療応用Gでも金ナノ粒子のサイズ制御に成功し、代表者らの理論通り緑色レーザー照射下での光発熱効果に関して最適な粒子サイズがあることを確認し、特定の細胞を分離・回収できることを示す成果も得ている。これらの例が示すように、当初予定よりもかなり早いスピードで本提案の目標のゴールに到達しつつある。 ※本課題と関連し、以下の受賞2件があったことも特筆すべき点である。 [1] 第23回光物性研究会奨励賞(2012年12月7日~8日、於:大阪市立大学)、発表者:田村守、飯田琢也、 [受賞者:田村守] 受賞日: 2012年12月14日 [2] The Best Poster Award in JSAMA2012 (2012/9/11, Osaka Prefecture University)、発表者:S. Hidaka, Y. Yamamoto, S. Tokonami, T. Iida [受賞者:Shimpei Hidaka]
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今後の研究の推進方策 |
代表者G(飯田G): 今年度の光集積現象に関する成果を受け、被検出分子の高感度特異検出の発展研究を行う。これと同時に、時間領域の理論手法である「光誘起力ナノ動力学法」に加えて、エネルギー領域で最終的な配列状態を探索するための新規理論手法である「光誘起力メトロポリス法」を開発する。この新手法により、被検出分子を模した異種のナノ物質が金属ナノ粒子に混在した場合に、溶媒の蒸発過程なども含めて組織化のプロセスを解明する。これにより、各実験Gで得られた結果を理論的に解析して高感度光駆動バイオセンサーの基礎原理を確立し、プロジェクト全体の完成を目指す。 光制御-分光G(伊都G): 軸対称ベクトルビームの強度分布や波長をパラメータとして振って形成される構造体がどのように変化するかを探り、代表者Gの理論との対応関係を詳細に調べる。また、代表者Gとセンサー応用Gの共同研究で得られた金属ナノ粒子-DNA複合体をベクトルビームで制御する実験も行い、目標とする光誘起力バイオセンサーにおける自由度を拡大する。 センサー応用G(床波G): 引き続き上記のサンプル提供を行い、暗視野顕微鏡やレーザーラマン顕微鏡を用いた測定により、光誘起力で集合化した検体-プローブ複合体の光散乱やSERSなどの光応答を計測し、飯田Gの理論との対応付けによりバイオセンサーユニットの目標達成に貢献する。 医療応用G(児島G): これまで、光応答性細胞基材の作製や広い領域での光細胞分離には成功しており、顕微鏡下で一細胞に光照射できる系の構築も行った。今後は、光照射による一細胞分離を実現すると共に、様々な組織の異種細胞の分離の実施例を積み重ねていきたい。光温熱療法への応用に向け、小動物を対象とした薬物運搬体の試験にも着手しており、医療応用ユニットの目標達成に貢献する。
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