研究課題/領域番号 |
23310081
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
磯部 徹彦 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (30212971)
|
キーワード | 蛍光ナノ粒子 / 生体親和性 / 複合ビーズ |
研究概要 |
これまで蛍光ナノ粒子を静電的な相互作用によってポリメタクリル酸メチル(PMMA)ビーズへ複合化させる手法を主として検討してきた。しかし、この手法ではビーズ表面にしか蛍光ナノ粒子を導入できないことが問題点であった。また、蛍光ナノ粒子を複合化したビーズをバイオ応用へ広く展開していくためには、PMMAよりも生体親和性の高いマトリックス材料を利用することが求められる。このような点から、本研究では生体親和性が高く、天然に豊富に存在するマトリックス材料に着目した。例えば、キトサンはカニやエビなどの甲殻類の外骨格から得られるキチンを濃アルカリ中での煮沸処理等により脱アセチル化して得られるので、資源の枯渇の心配がなく、医療分野にすでに応用され、形状の制御も可能である。本研究では、生体親和性の高い原料からビーズを作製する際に、ビーズ表面に蛍光ナノ粒子を吸着させるだけなく、ビーズ内部に固定化させることを検討する。この第1ステップとして、粒子径が制御できるW/Oエマルション法と化学架橋法とを組み合わせて自家蛍光を示さないキトサンビーズを作製することを検討した。架橋剤として、グルタルアルデヒド(GST)、トリポリリン酸ナトリウム(TPP)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)の3種類を使用した。それぞれのキトサンビーズの自家蛍光を観察したところ、GSTを用いた場合には、シッフ塩基による蛍光が観測されたが、TPPおよびEGDEを用いた場合には自家蛍光は著しく低下することが明らかにされた。また、キトサンビーズ以外に、自家蛍光を示さないアルギン酸ビーズの作製方法およびYAG:Ce^<3+>蛍光ナノ粒子との複合化についても検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
市販のキトサンは自家蛍光を示し、またグルタルアルデヒドを架橋剤として用いて作製したキトサンビーズも自家蛍光を示した。このため、キトサンの自家蛍光の原因を究明し、自家蛍光を示さないキトサンビーズを作製する方法を模索した。また、キトサン以外の生体親和性材料としてアルギン酸も検討材料として加えた。このため、当初の計画よりもやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
キトサンやアルギン酸などの生体親和性の高いマトリックス材料を、蛍光ナノ粒子と複合化して蛍光マイクロビーズを作製し、その大きさや複合形態などの諸特性を評価していく。用いる蛍光ナノ粒子としては、本研究代表者が開発したYAG:Ce^<3+>やYVO_4:Bi^<3+>,Eu^<3+>などの蛍光ナノ粒子から着手する。さらに、生体親和性の高い材料系で蛍光ナノ粒子を作製し、複合ビーズを作製することを検討していく。
|