研究課題/領域番号 |
23310081
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
磯部 徹彦 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (30212971)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 蛍光ナノ粒子 / 生体親和性 / 複合ビーズ |
研究概要 |
生体親和性の高いキトサンビーズの作製方法を検討した。キトサンをグルタルアルデヒド(GST)で架橋したビーズは、キトサンのアミノ基とGSTのアルデヒド基によるシッフ塩基の形成から自家蛍光を示した。そこで、SPG膜を用いたW/Oエマルション法によって、キトサンをトリポリリン酸(TPP)との静電的相互作用により架橋した低蛍光性ビーズを作製した。SPG膜孔径、キトサン原料濃度、TPP架橋剤量がビーズの形状と大きさに与える影響について検討した。SPG膜の孔径と同様のビーズを作製することができ、孔径と粒子径に相関性があることが明らかにされた。キトサン原料濃度を1.0 wt%から5.0 wt%へ増加すると、より球状なビーズが得られた。また、TPP /キトサンモル比が1より大きい時に球状ビーズが得られた。 次に、キトサンビーズを、青色可視光で励起し、緑色に発光するYAG:Ce3+蛍光ナノ粒子と複合化した。複合ビーズの作製方法の違いから、蛍光ナノ粒子の分布を調べ、蛍光強度を比較した。YAG:Ce3+ナノ粒子分散液添加のタイミングの違いから、架橋前添加、架橋後添加、洗浄後添加の3種類の複合ビーズを作製した。架橋前添加ではキトサンビーズは球状であったが、蛍光ナノ粒子は凝集したものが点在した。架橋後添加ではビーズが不定形で、凝集した蛍光ナノ粒子が点在した。これら2つの複合ビーズに関してはビーズの内部にもナノ粒子が存在した。洗浄後添加では、表面全体に均一な蛍光ナノ粒子が吸着し、球状の複合ビーズが得られた。吸着メカニズムとして、キトサンのアミノ基とYAG:Ce3+ナノ粒子の金属イオンとの配位結合や、正に帯電したナノ粒子と負電荷を持つTPPとの間の局所的な静電的相互作用などが考えられる。 そのほかに、シリカビーズやアパタイト蛍光ナノ粒子の作製方法や両者の複合化方法を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
架橋剤をグルタルアルデヒドからポリリン酸ナトリウムに変えることによって、昨年度に問題となっていたキトサンビーズの自家蛍光を著しく抑制することができ、キトサンがマトリックス材料として十分に利用できることを明らかにした。この低蛍光性キトサンビーズの調製方法を精査し、球状でサイズのそろったビーズの作製条件をかなり絞り込むことができた。さらに、低蛍光性キトサンビーズをYAG:Ce3+蛍光ナノ粒子と複合化する方法を検討し、ナノ粒子がビーズ表面に吸着したタイプの蛍光ビーズと、表面だけでなく内部にナノ粒子を内包するタイプの蛍光ビーズを作製する方法に目途を立てることができた。キトサンのほかに、シリカをマトリックス材料として選択し、シリカビーズのサイズを制御して作製することができた。蛍光ナノ粒子としては、YAG:Ce3+以外に、アパタイト蛍光ナノ粒子の作製を手掛けることができ、シリカとの複合化も着手することができた。
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今後の研究の推進方策 |
生体親和性の高いマトリックス材料としてキトサンやシリカなどを選択し、蛍光ナノ粒子と複合化して蛍光マイクロビーズを作製し、複合形態や蛍光ナノ粒子の含有量などの諸特性を評価していく。複合化に関しては、静電的な相互作用のほかに、蛍光ナノ粒子の核生成サイトとなりうる官能基をマトリックスビーズに付与し、そのビーズが共存する反応場で蛍光ナノ粒子を作製すると同時に複合化するなどの手法も比較検討していく。用いる蛍光ナノ粒子としては、とくに生体親和性の高いアパタイト蛍光ナノ粒子を集中して進めていく。
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