ヒドロキシアパタイト(HAp)は生体適合性が高い材料であり、Eu3+をドープすると赤色蛍光を示す。本研究では、SPG膜乳化法を用いて生体適合性のあるキトサンビーズを作製する過程において、ヘキサメタリン酸(HMP)被覆HAp:Eu3+ナノ粒子を加え、複合ビーズを作製することを検討した。 2-アミノエタノールリン酸(AEP)水溶液に硝酸カルシウム四水和物と硝酸ユウロピウム六水和物を溶解させ、リン酸水素二アンモニウム水溶液と混合し、100 ℃で16 h熟成してHAp:Eu3+蛍光ナノ粒子分散液を得た。この分散液を透析により精製したのち、得られたゲルをHMP水溶液に再分散させ、凍結乾燥してHMP被覆HAp:Eu3+ナノ粒子粉末を得た。HMP被覆前後でのHAp:Eu3+ナノ粒子のゼータ電位の符号は正から負へ反転した。これはナノ粒子を被覆するAEPがHMPで被覆されたことを裏付ける。また、HMP被覆HAp:Eu3+ナノ粒子は、凍結乾燥してもトリポリリン酸(TPP)水溶液に再分散することができた。 石油エーテル、流動パラフィンおよび界面活性剤を含む連続相に、分散相となるキトサンの酢酸水溶液を、SPG膜を通して加えて乳化させた。得られたエマルションに架橋剤としてTPP水溶液を滴下し、キトサンビーズを得た。キトサンビーズ作製時のTPP水溶液にHMP被覆HAp:Eu3+ナノ粒子粉末を加えて複合ビーズ①を得た。また、洗浄後のキトサンビーズにHMP被覆HAp:Eu3+ナノ粒子分散液を添加して複合ビーズ②を得た。光学顕微鏡画像より、複合ビーズ①、②ともに粒子径は、用いたSPG膜の孔径に近いサイズであった。蛍光顕微鏡画像ではキトサンビーズ、複合ビーズともに同等の赤色蛍光が観察され、HAp:Eu3+ナノ粒子の蛍光強度の増強などが今後の課題として残された。
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