放電プラズマ焼結(SPS)法や高圧ねじり加工(HPT)法と呼ばれる粉末焼結法により、ナノチューブの含有率を5 wt%(すなわち9.7 vol%)に上昇させたアルミニウム(Al)/窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)複合材料を作製した。本研究では、光学顕微鏡法、透過電子顕微鏡法、走査電子顕微鏡法、X線回折、およびエネルギー分散型X線解析装置により、2つの相が規則正しく密に分散しているか評価した。その結果、両手法を用いた試料それぞれにおいて、ホウ化アルミニウムもしくは窒化アルミニウムのような他の相が、AlとBNNTのマクロなスケールの複合体中に形成されていないことが分かった。SPS法で作製した試料(結晶粒径が10-20 m)では、試料の硬さに悪影響を及ぼすBNNTのマイクロスケールの不連続性や空孔が存在し、BNNTがAlの結晶粒界に沿って優先的に配向していることが明らかとなった。一方で、HPT法で作製した試料では、むしろ細かい結晶粒のAlマトリックス(結晶粒サイズが数100 nm)内でナノチューブが分布していた。ゆえに、HPT法で作製した試料の硬さは、Alペレット中に固溶したBNNTの増加とともに劇的に上昇することが確認された。3.0 wt%のBNNTを含有したAl-BNNT試料の値は、HPT法で作製した純粋なAlの試料の90 MPaに比較して、2倍以上の190 MPaに達した。また、本試料の室温における最大引張強度が、BNNTを含有しないHPT法で作製したAl試料の~200 MPaに比較して、1.5倍の~300 MPaに達することが分かった。一方で、ナノチューブを含有する試料では、割れに対する弾性ひずみが明らかに減少した。
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