研究課題/領域番号 |
23310083
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
若林 克法 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (50325156)
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研究分担者 |
岡田 晋 筑波大学, 数理物質科学研究科(系), 准教授 (70302388)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | グラフェン / エッジ効果 / 原子膜 / 分子膜 / 配置間相互作用 / 第一原理計算 / 電気伝導 |
研究概要 |
グラフェンは、炭素原子が蜂の巣格子構造を組んだ、一原子層物質である。極めて高い電子移動度を有し、一原子層であるため、ほぼ透明な物質であることから、次世代電子デバイスや透明電極材料などへの応用が期待されている。また、(半)整数量子ホール効果や特異なランダウ準位構造を有するなど、半導体界面で実現される従来の2次元電子ガスとは、極めて異なった電子物性をもつ。これは、グラフェンのπ電子状態が、質量のないディラック方程式で記述されることに起因する。本研究課題では、グラフェンなどのディラック電子系において、端や表面などの境界面が電子状態に与える影響を理論的に明らかにする。 ナノスケールのグラフェンでは、その電子状態は端の形状に大きく依存する。特にジグザグ端があると、端に電子が強く局在した状態が出現し、磁気分極を引き起こすことが、平均場近似によるモデル計算や局所スピン密度近似による第一原理計算からわかっている。しかし、これらの手法では低温および低次元系で重要となる量子多体効果が正しく取り入れていない。そこで、本年度は、配置間相互作用(CI)の方法により多体効果を取り入れることで、ジグザググラフェンナノリボンにおける電荷・スピン励起構造を調べた。その結果、電荷に対してはギャップが存在し、平均場近似と一致したが、スピン励起に対してはその励起エネルギーが極めて小さくなることを見いだした。これは、平均場近似では見られない結果である。さらに、ホールドーピング効果を調べることで、電荷・スピン励起ともに、極めて小さくなり、系が磁性を持ちたがり、かつ金属的になることを明らかにした。さらに、第一原理計算により、エッジをボロンで終端することで金属強磁性的な電子状態が実現することを示した。この他、BC3原子膜における表面状態を第一原理計算により解析し、エネルギーギャップの特異なサイズ依存性を見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ナノグラフェンにおける磁性状態に関して、配置間相互作用の方法と第一原理計算による解析を併用することで、ホールドーピング効果に対する理解を大きく進展させることに成功した。本成果は、論文として出版された。さらに、グラフェン以外の原子膜物質にも研究が展開しており、研究計画は、概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降も、グラフェンを含め原子膜系に関する電子状態および電子輸送特性に関する理論解析を引き続き実施する。さらに、グラフェンのみならず、BN系やMoS2などグラフェン関連物質に関する解析を進める。これらの解析によって、原子膜からなる電子デバイスの動特性を解明することを目指す。
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