研究課題/領域番号 |
23310084
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
岩浦 里愛 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所食品分析研究領域, 主任研究員 (00450312)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | DNA / 自己集合 / アセン / 分子認識 / 超分子化学 |
研究概要 |
(1)一次元集積体の基礎的光・電子特性の解明 まず、基礎的な光学特性を明らかにするため、アセン一次元集積体を含むバルクのサンプルについて、UV-Visおよび蛍光スペクトルを測定した。比較として、鋳型DNAを含まないヌクレオチド-アセン複合体のホモ集積体についても同様に測定した。ホモ集合体および二成分系集合体のいずれも、時間経過とともに蛍光強度の低下が見られたことから、これらの集合体は時間とともに集積化がすすみ、集積体中で濃度消光が起こっているものと考えられた。また、二成分系集積体の蛍光スペクトルでは、時間が経つと極大波長が約70 nmも長波長側に観察された。また、UV-Visスペクトルでは、ホモ集積体は溶媒中に分散したアントラセンと類似のスペクトルを示すのに対し、二成分系集積体中のアントラセンはアントラセン特有の微細構造を示さないスペクトルを示した。この結果は、二成分系集合体中のアントラセンがホモ集合体中のアントラセンと異なる基底状態を持つことを示唆する。 (2)一次元アセン集積体の時間分解蛍光分光 アセン分子の多くが蛍光発光を示すことが知られているが、蛍光特性を示す分子の蛍光寿命(励起状態にある平均時間)を調べることは、アセン分子の励起状態や、アセン分子の周りの環境を知るのに非常に有用である。そこで、調製したアセン一次元集積体の時間分解蛍光分光を行った。その結果、ホモ集積体および二成分系自己集積体中のアントラセンはいずれも、エキシマーを形成していることが示唆された。アントラセンのエキシマーは通常低温条件で形成するが、集積体を形成することでエキシマーが生成しやすい環境になっているものと考察した。また興味深いことに、ホモ集積体と二成分系集積体中で生成するアントラセンエキシマーの蛍光寿命が大きく異なることを見いだした。この理由について現在研究・解析をすすめているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初24年度中に終了予定の光学特性の測定まで実験をすすめることができたため、順調に進展しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
アントラセン誘導体のホモ集積および二成分系集積対中のアントラセンエキシマーの光学特性測定、解析を行う。またアセン系化合物のヘテロ集合体を鋳型DNAによって構造制御し、その光学特性を解明する。以上の研究結果を取りまとめ、論文として公表する。
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