研究課題/領域番号 |
23310087
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
諸根 信弘 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 講師 (50399680)
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研究分担者 |
HEUSER John 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 教授 (40571815)
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キーワード | 細胞膜 / カベオラ / 膜骨格 / クラスリン被覆ピット / 幹細胞 / 分化 / 電子顕微鏡法 |
研究概要 |
前駆細胞から成熟細胞への分化過程では、細胞形態が大きく変わる。そのため、細胞膜と細胞骨格系との相互作用、即ち、細胞膜との境界領域に局在する膜裏打ち構造のネットワークが重要な役割を果たすと考えられる。細胞膜分化で果たす細胞膜裏打ち構造群(アクチン膜骨格、クラスリン被覆ピット、カベオラ)の構造変換及び生理学的機能意義を理解することが、本研究の目的である。研究期間全体で、脂肪・内皮・血球組織系の細胞膜分化を中心として、膜裏打ちネットワークの構造変換や膜骨格で仕切られる細胞膜ドメインなどを対象として、「急速凍結・ディープエッチ電子顕微鏡法」で3次元可視化構造解析する。組織・細胞種に依存した「細胞膜裏打ちネットワークの役割」を解明することを目指している。平成23年度は、「脂肪細胞系の細胞膜分化構造解析」を通して、これらの構造変換と脂肪代謝機能との相補的理解を解明した。第1に、マウス胎生由来の前駆脂肪細胞を利用した。前年度までに脂肪前駆細胞と分化細胞について細胞膜直下全体の可視化に成功していたが、当該年度は定量的な構造変換解析を進めた。細胞膜分化により、脂肪組織系のカベオラ構造の個数密度(1μm2面積あたりの個数)が100倍増大していること、これと併せてアクチン膜骨格の分岐度が単純化していることが明らかとなった。第2に、前年度までに解明していた、培養浸透圧と機械的応力によるマウス肺組織内皮細胞の細胞膜構造変換機構について研究を発展させた。すなわち、細胞膜陥入構造であるカベオラの構造形成(変換)に、細胞内転写因子のタンパク質が深く関与することを電子顕微鏡による免疫染色・構造解析の側面から明らかにした。これらの構造解析を深化させる為の技術開発も積極的に推進した。現在、これらの脂肪組織細胞の構造変換に関わる他のキータンパク質の特定、脂肪代謝の効率化についての検討を継続している。併せて、組織幹細胞であるヒト間葉系幹細胞からの分化誘導についても、同様の構造解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に予定されていた脂肪細胞系の細胞膜分化構造解析を技術的に確立すると同時に、細胞膜裏打ち構造群のひとつであるカベオラの構造形成変換について、私たちが推進する急速凍結・ディープエッチ電子顕微鏡法でしか解明できない重要な知見を明らかにしているため。
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今後の研究の推進方策 |
これまで推進してきた「細胞膜分化による構造変換機構」を、内皮組織細胞系で解明することで、細胞機能の相補的な理解を導きたい。特に、内皮組織が担う呼吸や血流の圧力変化に順応する機能について、カベオラの構造変換を中心に説明できないか検討する。
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