研究課題
最近、私たちは、細胞膜にあるカベオラの渦巻被覆構造形成について、Caveolin1だけでなくCavin1/PTRFが中心的な役割を果たすことを、急速凍結・免疫フリーズレプリカ電子顕微鏡法で観察することに成功した。細胞膜分化による細胞膜裏打ち構造群の構造変換及びその生理学的機能意義を理解するうえで重要である。これに関して、本年度は以下の研究をおこなった。【1】Cavin1欠損細胞株がカベオラ特有の渦巻被覆構造のないバブル状陥入構造を形成することがわかった。併せて、この細胞にCavin1を発現させると、カベオラの渦巻被覆構造が復元することから、Cavin1がCaveolin1と同程度にカベオラ形成に必須であることを示すのに成功した。しかし、このカベオラ構造が幾分不完全な緩い渦巻きを形成することから、引き続き、第3の構成タンパク質について、免疫染色データの収集を急いでいる。【2】Cavin1のタンパク質発現により、カベオラ構造の周囲をガードルすると同時にアクチン膜骨格と繋がる、半月状の特異構造が高頻度に生じることが観察された。このように、カベオラのクレセント構造を発見した。【3】Cavin1の局在が平坦化したカベオラに比較的多いことから、Cavin1がエンドサイトーシスの抑制を促す役割を担うことが少しずつわかってきた。【4】カベオラの構成タンパク質の局在をより詳細に把握するために、視認性の高い電顕観察用の構造プローブの開発に成功した。光変換型蛍光タンパク質Dendra2とCavin1の融合タンパク質が数ナノメートルの隆起構造として識別され、カベオラ表面でCavin1の位置を精確に観察できるようになった。現在、Dendra2融合タンパク質については、CLEM (Correlative Light Electron Microscopy)用プローブとしての可能性を検討中である。
2: おおむね順調に進展している
実績概要のように、カベオラの構造形成について、発見を含めた多くの新しい知見が得られている。本研究の目的である、細胞膜分化による細胞膜裏打ち構造群の構造変換及びその生理学的機能意義を理解するうえで重要であるため。
当該年度までの急速凍結・免疫フリーズレプリカ電子顕微鏡法を基盤とする方策が、細胞膜裏打ち構造群の観察に有効であることが再確認されるため、基本路線は維持したい。細胞膜分化について総括するために、より多くの組織・細胞株に関するデータ収集を急いでいる。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 3件)
Cell Rep
巻: 2(5) ページ: 1448-60
10.1016/j.celrep.2012.09.015
Blood
巻: 120(6) ページ: 1299-308
10.1182/blood-2012-03-417881
PLoS One
巻: 7(11) ページ: e49208
doi: 10.1371/journal.pone.0049208
J Am Chem Soc
巻: 134(14) ページ: 6092-5
doi: 10.1021/ja3007275
Semin Cell Dev Biol
巻: 23(2) ページ: 126-44
doi: 10.1016/j.semcdb.2012.01.018