研究課題/領域番号 |
23310089
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松本 潔 東京大学, IRT研究機構, 教授 (10282675)
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キーワード | マイクロファブリケーション / 流体デバイス / マイクロ情報デバイス |
研究概要 |
微小液体への有機膜蒸着による封止技術の確立に関して、液体としてシリコンオイルを用い、パリレン膜を蒸着する程における液滴形状の変化を観察した。重力により平坦だったシリコンオイルは、蒸着開始後12分付近で急に液滴中央部が盛り上がり、14分でほぼ球面状となった。12分の時点で、パリレン膜の生成が急速に進んだことを示している。終了時の液滴形状から計算されたパリレン膜の応力は700uN/mmとなり、これはシリコンオイルの表面張力34uN/mmの20倍以上であった。 液体が周囲の界面を介して行なう力の伝達や発光・光伝搬の解析、機能性液体の探索およびデバイス適用に関し、液体をパリレンでカプセル化した機能性マイクロビーズを検討した。これはマイクロ化学や生化学分野において微小空間で計測を行うための機能性液体を、カプセル化するものである。 微小液体を保持するために、多孔質シリカビーズを用いた。機能性液体は毛細管現象によって多孔質ビーズ内に吸着される。シリカとパリレンの密着性を向上させるため、ヘキサメチルジシラザンによる表面処理を行った。ビーズの全面にパリレン膜を蒸着し、かつ蒸着中にビーズがほかのビーズや壁と固着することを防ぐために、真空チャンバー内でビーズを500Hz程度で振動させながらCVDプロセスを行う手法を開発した。デバイス適用として、温度センサとpHセンサの実験を行った。温度センサは、機能液体としてイオン液体に蛍光物質(Rhodamine B)を溶かしたものを用いた。Rhodamine Bの蛍光強度が温度に依存するため、温度センサとして機能することを確認した。pHセンサは、機能液体としてイオン液体にプロモチモルブルー(BTB)粉末を溶解させたものを用いた。ビーズに蒸着するパリレンの厚さを0.2umと薄くすることでOH-イオンがパリレン膜を通過し、アルカリ溶液中では内部のBTB分子と反応して色が変化して、pHセンサとして機能することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特に微小液体への有機膜蒸着による封止技術の確立に関して、上記成膜過程の解析の他に、膜の液体との界面のミクロ構造の評価などを行い、順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
シリコンオイルやイオン液体に対するパリレン膜による封止技術は、ほぼ確立したものと考えている。液体が周囲の界面を介して行なう力や光の伝搬解析は、本年度の成果にあるような温度、イオンなども含め広い範囲での物質あるいは物理量の授受、伝搬について検討を行い、さらに機能性液体の探索やデバイス適用までをふまえて、広い範囲で応用まで見据えて探索していきたいと考えている。
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