研究課題/領域番号 |
23310089
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松本 潔 東京大学, IRT研究機構, 教授 (10282675)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | マイクロファブリケーション / 流体デバイス / マイクロ情報デバイス |
研究概要 |
微小液体への有機膜蒸着による封止技術の確立に関して、液滴上に蒸着されたパリレン膜のミクロ構造の評価を行い、生成プロセスを明らかにした。平面状に塗布した液体(シリコンオイル)の上に蒸着したパリレン膜を引き剥がし、SEM観察を行った。蒸着源側(液体と反対側)の表面はスムースで稠密であるが、液体側(液体と接触側)の表面はあれていて、ポーラス状になっていることが観察された。さらに引き剥がしたパリレン膜を切断し、切断面のSEM観察を行った結果、液体側から厚さ1.2μm程度厚さのポーラス状のパリレンが生成し、その上に平坦で稠密な通常のパリレンが生成していることがわかった。 液体が周囲の界面を介して行なう力の伝達や発光・光伝搬の解析に関連し、気体や液体の透過性の指針とするため、パリレンポーラス膜の粒度を評価した。液体として分子量の異なる3つのシリコンオイルやグリセリンを用いて、膜の生成の違いを調べた結果、分子量とポーラス面の粗さには、正の相関がみられ、ポーラス膜の粒度を制御できることがわかった。 機能性液体の探索およびデバイス適用に関し、イオン液体をパリレンで封止したガスセンサを目指して、イオン液体によるガスの検出実験を行った。デバイスは、イオン液体とグラフェンチャネルによりFET(電界効果トランジスタ)を構成するものである。イオン液体はガスの種類による選択性をもつ。またグラフェンチャネルは周囲1nm程度の電気2重層に敏感に反応する。これらにより、低電圧で駆動が可能で、ガスの種類、濃度に反応して異なった特性を示す電界効果トランジスタを形成できる。実験により、1V以下のゲート電圧で、30ppmのNH2と4000ppmのCO2を検出できることが確認できた。またNH3とCO2では異なったI-V特性を示すため、選択的なガスの検出も可能であると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特に微小液体への有機膜蒸着による封止技術の確立に関して、上記膜の液体との界面のミクロ構造の評価の他に、パリレン膜ミクロ構造の生成過程の評価も進めいている。また、実際にガスを用いた透過特性の評価も開始している。
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今後の研究の推進方策 |
シリコンオイルやイオン液体に対するパリレン膜による封止技術は、確立したものと考えている。液体が周囲の界面を介して行なう力や光の伝搬解析は、本年度の成果にあるようなガスの他にイオンなども含め広い範囲での物質あるいは物理量の授受、伝搬について検討を行う。さらに機能性液体の探索やデバイス適用までをふまえて、広い範囲で応用まで見据えて探索してゆく。次年度が最終年度であるため、研究の総括も行う。
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