研究概要 |
本研究では、エージェントベースモデルおよび現実のデータに基づく実証分析を通じ,企業のコーポレートアクションが金融市場に与える影響について分析を行う. 本年度においては,はじめに,実証分析およびモデル化において必要となる基礎分析にて用いるデータベースの構築を行った.具体的には,企業のM&A(Mergers and Acquisitions)および自社株買い等に焦点を当て,企業のコーポレートアクションに関するデータの収集整理を行った.また,分析に必要となる金融資産価格データに関するデータの収集整理もあわせて行った.これらデータを用いコーポレートアクションと資産価格の関連性について基礎的な分析を行った.更に,現実の企業のステークホルダーの調査のために,金融市場参加者へのヒアリング調査もあわせて実施した. また,本分析では,コンピュータ上に複数のステークホルダーが存在する金融市場シミュレーターの構築を実施し,当市場を通じた分析を行った.本年度については,異質な投資家が存在する金融市場を対象とし,投資の際に投資家に課される規制・制約条件に焦点を当てた分析を行った.分析の結果,投資制約が金融市場に導入された場合に,投資家に課された制約と投資家の意思決定バイアスとの複合効果により取引価格がファンダメンタルバリューから大きく乖離する現象が生じる可能性のあることを見出した.なお,当分析結果は,また,パッシブ運用とアクティブ運用の有効性に焦点をあてた分析も実施した.
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