研究課題/領域番号 |
23310110
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
多田村 克己 山口大学, 理工学研究科, 教授 (30236533)
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研究分担者 |
大貝 彰 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10160433)
鵤 心治 山口大学, 理工学研究科, 教授 (30264071)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バーチャルリアリティ / 都市防災 / 避難訓練 / シミュレーション / 可視化 |
研究概要 |
延焼シミュレータ及び行動困難性評価システムの開発 昨年度に引き続き,延焼シミュレータの改良を行った.具体的には,セルオートマトンモデルに基づき燃焼セルから未着火のセルへ着火可能性の値を配分する際等において,同一の建物内と異なる建物間の違いを考慮することなく,すべて同一の処理および同一基準での判定を行っていた.今年度は,セル毎にそれが含まれる建物のID情報を新たに属性情報として保有可能とする手法を開発した.この情報を持つことで,前述のセル間の関係が明確になるだけではなく,空間的な情報を用いて延焼可能性を評価可能になり,延焼モデルを実際の延焼に近づけることができた. 行動困難性の評価に関しては,従来は建物倒壊に起因する道路閉塞を確率でしか表現していないため,感覚的に避難経路が通りにくそうだと言うことしか分からなかった.今年度,倒壊確率と建物倒壊状況および倒壊により生じる瓦礫の量との関係を定義し,それに基づいて道路への瓦礫流出利用を計算して道路上に散乱する物体として表現する手法を開発した.また,建築構造毎に倒壊度を複数段階に分け,それぞれに対応する倒壊状況の立体モデルを作成して,元の建物の位置に自動配置する手法を開発した. 避難訓練シミュレータの開発と評価 避難訓練シミュレータの開発は,昨年度に引き続き大震災に付随して発生する火災による視程の低下をウォークスルー画面に反映させるための要素技術の開発を中心に実施した.昨年度までに,延焼状態を考慮した煙の分布シミュレーションシステムを開発しており,今年度は,煙分布を反映したウォークスルー画面のリアルタイム生成に関する検討を行った.その結果,前処理で視程低下状況をデータベース化しておきウォークスルー画面生成の際にフィルタとして利用することで,視程低下表現のための計算負荷を軽くかつ安定させることを実現可能な手法を開発した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大規模災害避難訓練シミュレータの構成要素の手法開発は,順調に進捗している.特に,煙による視程低下を考慮可能とする手法に関しては,ウォークスルーシステムのプロトタイプで性能評価を実施可能なところまで進んでいる.ただし,当初計画で予定していた避難訓練シミュレータのプロトタイプを利用したシステムの評価は,今年度実施しなかった.これは,研究ベースで開発している現在のウォークスルーシステムは,データの規模が大きくなると動作が不安定になることと,大規模災害の影響が何もない健全な町並みでしか実験できないため,何ら有益な知見は得られないと判断したためである. また,当初計画では今年度仕様を策定して来年度専門業者に発注することを予定していた大規模災害避難訓練シミュレータについては,仕様検討の手間が膨大になるため,今年度から外部業者とともに順次仕様検討と設計を並行して進めることにした.
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今後の研究の推進方策 |
大規模災害避難訓練シミュレータについては,来年度下期には,基本的な機能を備えた初期バージョンをリリースできる予定である.これを用いて,コンピュータの非熟練者を対象としたシステム操作性の研究に着手する予定である.これまで実施した操作性に関する予備検討において,現存の一般的なユーザインタフェースを利用する限り,ユーザーにプロジェクタで表示した仮想空間内を歩いて移動することを求めていること自体が,操作の違和感を引き起こす原因になる事が分かっている.このため,当初計画していた複数人で相談しながら避難経路を選択する訓練を実現する機能等については,見直しが必要になる可能性がある.来年度,操作性の見直しに関連付けて,避難開始場所から目的地までの移動手段をユーザーにどう意識させるかについて検討する.また,延焼シミュレーションから視程低下フィルタデータベース構築までを一つのシステムの統合して,一般利用可能にする.さらに,ウォークスルー画面の現実感を高めるための要素技術の開発に着手する.
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