1 社会反応の定量化の試み 「平成23年3月に発生した福島第一・第二原子力発電所の放射性物質放出事故(以下、福島原発事故)により放射能に汚染された食品」に対する社会の反応について新聞報道の定量化と過去に発生した事件との比較分析を実施した。福島県産及び茨城県産食品(ホウレンソウ等)から食品衛生法上の暫定規制値を超過した放射性物質の検出が発表されたことを契機に報道量が増加し時間の経過とともに報道量は減少したが、それ以降途切れることなく関連の報道が続き社会反応は長期化した。近年発生した健康危機事件との比較分析を行った結果、O-157事件(1996年)、雪印事件(2000年)、BSE事件(2001年)や鳥インフルエンザ事件(2004年)に類似の傾向を示した。これらの事件はリスクについて未解明の部分が残り食品に対する社会の関心・不安が長期化する傾向にある。福島原発事故による放射能汚染は他の類似事件に比べ記事当たりの文字数が多い。つまり占有面積が大きく読者の目に留まりやすい記事が多く掲載されているものと推察される。 2 リスコミの問題点の調査とその解決策の研究 ・福島原発事故による放射能に汚染された食品は未解明・未解決の部分が多く残されているという特徴を有しており、その社会反応は同様の特徴を有する健康危機事件(BSE事件等)と似た傾向を示した。また、福島原発事故による放射能に汚染された食品に関する新聞報道は、長期化するだけでなくその量(文字数)が格段に多い。このことから、このリスクに対する社会の反応・不安は今後もしばらく継続すると予想されるともに、BSE事件等と同様にその反応・不安も固定化する可能性があると推察される。このような事件の場合、些細なミスコミュニケーションが大規模な社会反応につながることや報道の独自取材による記事が書かれやすく発表内容の精査や定期的な報道への情報提供が重要となる。
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