研究課題
本研究では、津波による押し波と引き波がもたらす堆積学的効果を災害科学的に評価する。この目的に於いて、津波堆積作用解明の先駆けとなった1983 年日本海中部地震津波の観測結果を基本とし、日本の歴史に特筆される災害をもたらした869年貞観地震津波(以下貞観津波)と2011年東北日本太平洋沖地震津波(以下3.11津波)を主要研究対象として、理学と工学の立場から堆積物を通して津波による海水流を高精度に解析し、その水理学的機能を検討した。津波による災害の地球科学的解明は定性的な状況に留まっており、その物質運搬についての理解は未だ不十分である。本研究の特色は、特に災害科学の立場でこの隘路を克服するため、陸と海で津波による物資運搬作用を学際的立場で面的に解明するという新規の試みにより、強力な流れがもたらす堆積学的実態に迫ると伴に、津波の自然災害を堆積学的に評価する方法を確立することにある。引き波がもたらす運搬作用が大規模になると、流れは重力流を形成して陸棚縁辺にまで到達する可能性がある。初年度には3.11津波の溯上域において侵蝕流がもたらす堆積作用の解明に勤め,地表面条件に依存する溯上過程が明らかとなった(箕浦,2011).リワークされた堆積物は,戻り流れにより海側に移送され,重力流を形成して沖に集積したと考えられる.これを実証する目的で平成24年3月末に仙台湾で試料を採取し,現在解析を進めている.今村は津波の伝播過程を数値的に復元し、地震とは別の機構が関わって3.11津波が発生したと予測している.理学と工学の学際的視野での津波重力流物質移動の解明は、新たな災害科学の研究領域を創出すると伴に、本研究得られた成果は災害予測に大きく貢献するものと考えられ、更には地殻侵蝕物質の最終定着を理論的に解明する地球科学的命題への糸口を与えるであろう。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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