研究課題/領域番号 |
23310120
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鍵山 恒臣 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50126025)
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研究分担者 |
宇津木 充 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10372559)
大沢 信二 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30243009)
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キーワード | 火山噴火 / 噴火未遂 / 地下構造 / 揮発性成分 / 噴火予測 |
研究概要 |
火山噴火の予測精度を向上させるには,異常現象を経て噴火に至るケースを研究するばかりではなく,異常現象が噴火につながらないケース(噴火未遂)についても理解を深める必要がある.本研究者らの最近の研究成果によれば,異常現象から噴火に至るまでの過程は多様であり,この多様性は,マグマが地表まで容易に到達できるか,できないかに拠っている.本研究は,マグマの上昇を阻害し「噴火未遂」に終わることを決定づける現象がどこで発生しているかを,地下構造の観点から明らかにする.特に,マグマに含まれる揮発性成分がどの深さでどの程度失われているかを電気伝導度構造から評価する手法を試みる.初年度は,以下の調査を実施した. 阿蘇カルデラの北部,由布・鶴見・伽藍岳周辺,および霧島火山群周辺において,浅部電気伝導度分布調査を行った.詳細は解析中であるが,それぞれの火山周辺において高電気伝導度領域が広がっていることが明らかとなった.また,これらの火山周辺において温泉・湧水の採集を行い,同位体水文学的調査を行った.これらの分析もとりまとめ中であるが,火山体周辺の高電気伝導度領域に対応してマグマ起源物質の拡散が起きていることを示唆する結果が得られている. また,阿蘇カルデラにおいて,中岳を通る北北東-南南西方向の測線において深部比抵抗構造調査を行った.その結果,浅部の低比抵抗層の下に高比抵抗層があり,深さ15km程度において低比抵抗域が存在していることが明らかとなった. 阿蘇火山の中岳周辺において高精度電磁気探査を繰り返し実施し,帯水層付近の電気伝導度構造の時間変化の検出を試みた.阿蘇火山に発生した集中豪雨に伴って表層付近の電気伝導度が変化していることが明らかとなった.これらの詳細な結果は,現在解析中である. こうした研究を蓄積したうえで火山噴火シナリオ作成に研究成果をどのように反映していくか検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タイにおいて発生した水害によって購入予定の機材の納入が遅れたために実験の開始が大幅に遅れることとなったが,高精度電磁気探査を実施した時期に火口湖の水位の大きな変動が発生したことにより,火口直下の電気伝導度が変化する現象に遭遇でき,その変化が実際にとらえられることを実証できた.また、そのほかの火山についても表層電気伝導度分布を調査することができ,高電気伝導度領域の広がりがあることが明らかとなった.また,阿蘇カルデラの深部比抵抗構造についても1本の測線について明らかとなっている.
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今後の研究の推進方策 |
高精度電磁気探査は4点での繰り返し測定であるために時間変化起きていることを検出することには成功しているが,どの領域で変化が起きているかを精度よく決めるには至っていない.そのため,測定点数を増やして変化している領域を決める調査を進めていく.阿蘇カルデラの深部比抵抗構造については,2本目の測線の調査を行い,面的な広がりを明らかにしていく.浅部電気伝導度分布調査と温泉水の水文学的調査については,九州の他の火山の調査を行い,台湾の火山における結果との比較も行う.
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