研究課題/領域番号 |
23310120
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鍵山 恒臣 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50126025)
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研究分担者 |
宇津木 充 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10372559)
大沢 信二 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30243009)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 火山 / 自然災害 / 地熱 / 地下構造 / 噴火予測 / 噴火未遂 |
研究概要 |
火山噴火の予測精度を向上させるには,異常現象を経て噴火に至るケースを研究するばかりではなく,異常現象が噴火につながらないケース(噴火未遂)についても理解を深める必要がある.本研究者らの最近の研究成果によれば,異常現象から噴火に至るまでの過程 は多様であり,この多様性は,マグマが地表まで容易に到達できるか,できないかに拠っている.本研究は,マグマの上昇を阻害し「噴火未遂」に終わることを決定づける現象がどこで発生しているかを,地下構造の観点から明らかにする.特に,マグマに含まれる揮 発性成分がどの深さでどの程度失われているかを電気伝導度構造から評価する手法を試みる. 平成24年度は,阿蘇カルデラ,九重火山,雲仙火山周辺の電気伝導度構造を調査し,それぞれの火山周辺において高電気伝導度領域の広がりを明らかにした(論文2,3,5). 火山活動の時間変化に伴う電気伝導度構造の変化を検出する試みについては,阿蘇火山の中岳周辺において高精度電磁気探査を繰り返し実施し,阿蘇火山の活動が活発化するにしたがって火口下200m程度において電気伝導度が低下し,活動が低下すると電気伝導度が高くなる結果が得られた.この結果は,深部から供給される火山流体中の気体成分比が変化したことによると解釈される(論文6).火山活動の変化に伴う電気伝導度構造の変化を高精度に検出できることを初めて明らかにしたものである.一方,検出される電気伝導度構造の変化がマグマからの脱ガスとどのように関係しているかを明らかにする試みとして,熱水に浸された岩石の電気伝導度が熱変質によってどのように変化するか(論文1),電気伝導度構造から脱ガス量を推定する手法の検討(論文7)をおこなった.また,噴火未遂の事例研究として,阿蘇火山の微小噴火に関する諸研究を比較検討し,結果を月刊地球において公表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
噴火未遂に関係する事例の多い火山周辺において電気伝導度分布調査を行い,高電気伝導度領域の広がりがあることが明らかとなった.また,火山活動の変化に伴う電気伝導度構造の変化を検知する試みについて,阿蘇火山で高精度電磁気探査を実施した結果,帯水層に供給される火山流体の気体成分比の変化に伴う電気伝導度構造の変化を検知できることが明らかとなった.また,電気伝導度構造からマグマの脱ガス量を推定する手法についても検討が進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
繰り返しの高精度電磁気探査では,電気伝導度の時間変化を検出することに成功している.この変化がどの領域で起きているか,そのことが噴火未遂とどのように関連しているかを明らかにするには至っていない.そのため,他の観測結果との関連も比較していく必要がある.また,浅部電気伝導度分布調査と温泉水の水文学的調査については,九州の火山の結果と台湾の火山における結果との比較も行う.
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