研究概要 |
東日本大震災による津波被害を踏まえた防災ハードウェアとして,津波潜堤を開発する.津波潜堤は沿岸部に来襲する津波エネルギーの減衰を目的として水平方向および鉛直方向の流速を変化させ,津波自身の物理的性質を利用して運動量の減少を図る設計とする.このような津波潜堤を開発するために,今年度は以下のような研究を実施した. (1)東日本大震災における海岸保全施設の津波減勢効果の評価 従来の潜堤や湾口防波堤など既に設置されている津波対策構造物に関する資料収集を行った.そして,東北地方太平洋沖地震津波における被災事例や減勢効果について検討した.その結果,防潮堤等の海岸保全施設の被害の多くは,水深の小さい表法尻および平常時は露出している裏法尻が津波の来襲および越流により洗掘が生じることによって始まることがわかった.また,越流した堤防等のすべてが全壊しているわけではないことや破損しても津波の減勢効果があったことなどがわかった. (2)津波潜堤の減勢効果に関する水理実験環境の準備 次年度以降に行う津波潜堤の減勢効果に関する水理実験に用いる平面水槽を準備した.また,海水中でのコンクリート構造物の生物環境へ与える影響を調べる実験水槽を構築した. (3)津波潜堤の減勢効果に関する数値シミュレーション環境の準備 次年度以降に行う津波潜堤まわりの三次元的な津波シミュレーションに用いる外力条件の一つとして,東北地方太平洋沖地震津波の再現計算を実施した.計算結果を同津波に関する津波高の現地調査結果およびGPS波浪計の観測結果と比較し,高い再現性を有していることを確認した. (4)津波潜堤の力学的性能を充足させるためのコンクリート材料および配合の検討 次年度以降に作成する津波潜堤模型に採用するための配合設計方針を決定するための基礎資料を作成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は12月に追加採択されたため,本年度においては,次年度以降に実施する実験およびシミュレーション環境の構築を目標とした.そして,両環境の準備は完了し,次年度以降は実験およびシミュレーションが実施できる状況にある.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,今年度の評価結果を踏まえて津波潜堤の設計を行った後,コンクリート供試体の製作およびコンクリート実験を実施する.その後,供試体を用いた水理実験を実施するとともに,水理実験と同条件での数値解析を並行して実施する.
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