研究課題/領域番号 |
23310126
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
千木良 雅弘 京都大学, 防災研究所, 教授 (00293960)
|
研究分担者 |
山崎 新太郎 北見工業大学, 工学部, 助教 (40584602)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 初生地すべり / 山体重力変形 / 地質構造 |
研究概要 |
山体重力変形の生じた斜面を対象として,高品質ボーリングコアの観察・記載方法を確立し,重力による岩石の変形の特徴と初生地すべりへの発達過程を解明し,それを力学的に理解するため,以下の事項の研究を実施した。 1)重力による岩石の変形と初生地すべりへの発達過程の解明:地表面には連続的な滑落崖が生じていないものの,不規則形状の凹凸地形が生じている斜面で,斜面内部の不攪乱コア試料を用いた地質構造観察を行い,23年度に得られた成果―テクトニックな変形と表層の重力変形の変形構造との違い―を用いて,斜面内部での重力変形程度と,それによるすべり層(破砕帯)の発達程度と連続性を評価した。その結果,すべり層は斜面内部に散在しており,未だ斜面内部を連続的に横断する形態にまでは発達していないこと,そして,このことは,地表に連続的な滑落崖が形成されていないことと対応することが明らかになった。また,明瞭な移動体の下のインタクト岩盤内に小規模な破砕帯が形成され,それに伴って空隙も形成されていることが明らかになり,すべり層が深度方向にもステップ的に発達していくことが明らかになった。 3)深層崩壊発生個所の地質構造解明:2011年台風12号によって発生した深層崩壊発生個所の地質構造と詳細地形とを調査比較し,深層崩壊発生前に小規模ではあるが連続的な小崖が冠頂に生じていたことを明らかにした。これは,上述のすべり層が斜面内部で発達して連続し,それが地表にまで現れていたことを示している。つまり,これらの深層崩壊は重力斜面変形が発達して生じた初生すべりであることが明らかになった。 4)初生地すべり発生の力学的理解:有限差分法によって,重力変形した斜面の力学解析を行い,河川の下刻に従ってすべり層が発達していく過程を検証することができた。また,地質構造に応じてすべり層がステップ的に生じていくことも説明することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した研究目的達成のために,同申請書に記載した事項を順調に達成した。また,その結果は,学術論文と国際研究発表会において公表した。
|
今後の研究の推進方策 |
24年度までの研究を発展させるとともに,研究成果をヨーロッパ地球科学連合,および国内の関連学会において発表し,さらに,研究論文としてとりまとめ,GeomorphologyやTectonophysicsの学術誌などに発表する。特に,斜面の重力変形の力学的解析を進めるとともに,地質構造の違いによる重力変形の様式の違いを明らかにする。
|