研究課題/領域番号 |
23310128
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
大串 浩一郎 佐賀大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (00185232)
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研究分担者 |
岸原 信義 佐賀大学, 大学院・工学系研究科, 客員研究員 (40003769)
日野 剛徳 佐賀大学, 低平地沿岸海域研究センター, 准教授 (20295033)
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キーワード | 流域治水 / 野越 / 霞堤 / 氾濫 / 堆積 / 定方位板状地層採取 / 数値シミュレーション / 城原川 |
研究概要 |
本研究では,かつて計画的な治水・利水が行われたと考えられる佐賀平野を研究対象フィールドとし,どのような流域対応の効果的治水施策が行われたのかを地盤工学的・水工学的アプローチによって定量的に評価し,今後の我が国の流域での対応による治水の具体的方策として提案することを目的として研究を進めている.平成23年度は、佐賀平野東部を流れる城原川における5つの野越の内の1つである八子野越の着目し、かって洪水時に本川から越流し河川水とともに運搬・堆積されていった土砂の堆積状況を定方位板状地層採取により堤内地における堆積状況(層序、年代区分、物理的区分等)を、調査した。試料の堆積学の視点による観察の結果、深さ0.4m前後に城原川野越からの越流により形成された可能性を伴う地層の存在が示唆された。粒度試験の結果から、注目層の中砂は上下の地層に比べ10%以上多かった等、本研究の視点を裏付けるいくつかの重要な知見を得た。 さらに、城原川に存在する4つの霞堤、5つの野越ならびに2つの無堤地帯を考慮した流域治水システムを理解するために、1次元非定常開水路ネットワークによる水理解析を行った。さらに、八子野越(5号野越)から越流・氾濫する河川水の2次元氾濫数髄シミュレーションを実施し、採取土砂との関連性を考察した。 一方、八子野越の対岸に構築されている3個の野越(乗越堤)は高水敷・放水路を設ける等、越流速を減ずる独創的な施設や放水路が設けられているが、これに対して、右岸の野越には独創的な施設はなく、明治時代初期の地租も場所による大差がなく、左岸の地租と対照的である事が明らかになった。これら施設・地租の大差を生じた越流速など洪水流の挙動に関する今後検討すべき問題点が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り、流域治水の履歴が残っていると考えられる城原川野越周辺の堤内地において定方位板状地層採取ならびに野越からの氾濫数値シミュレーションを実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
定方位板状地層採取は、土地の地権者や利用者の同意を得て実施する必要があるため、関係者が数多く存在する嘉瀬川堤外遊水地においては調査自体が非常に困難である。したがって、嘉瀬川での調査を取りやめ、城原川に焦点を絞って調査を実施する。城原川では平成23年度に実施した野越付近の調査だけでは不十分で、上流の霞堤付近の調査を平成24年度に実施する予定である。城原川の該当する箇所は土地の地権者・利用者が少なく、調査への同意が比較的取りやすいと思われる。
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