研究課題/領域番号 |
23310128
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
大串 浩一郎 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00185232)
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研究分担者 |
日野 剛徳 佐賀大学, 低平地沿岸海域研究センター, 教授 (20295033)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 流域治水 / 野越 / 霞堤 / 氾濫 / 堆積 / 定方位板状地層採取 / 数値シミュレーション / 城原川 |
研究概要 |
平成24年度は、佐賀平野東部を流れる城原川における4つの霞堤の内の1つである1号霞堤の着目し、かつて洪水時に本川から越流し河川水とともに運搬・堆積され、あるいは本川での洪水が収まりかける時点での本川への流出といった河川水流入・流出とそれにともなった土砂の堆積状況を定方位板状地層採取により堤内地の堆積状況(層序、年代区分、物理的区分等)を調査した。この調査に先立って、水受堤の過去の存在位置を推定するためにスウェーデン式サウンディング試験を実施し、過去の水受堤の延長や位置、規模などについての推定を実施し、本調査への橋渡しとした。結果として、受堤が存在していたと考えられる地点の近傍ほど砂質土が多く堆積し、同砂質土はこれより広がる形で堆積する地形の変遷を捉えたことが示唆されたこと、さらに、スウェーデン式サウンディング試験の適用は、堆積物に伴う地形の変遷を表現できる可能性があること、などの新たな知見を見出した。しかる後に定方位板状地層採取を適用して地層採取を行い、土砂の堆積状況について層序、年代区分、物理的区分等の観点から明らかにすることにより、同地形の変遷を裏付けた。これらの結果は解析に必要な種々の条件設定の信ぴょう性を裏付けるものと考えられる。 さらに、城原川の野越・霞堤から越流した洪水流の堤内地での挙動について数値解析を行い,城原川における流域治水の現状を考察した。その結果、城原川流域では,かつて遊水地であった地域に住宅地などが建設された。そのため,確率年50 年よりも小さい規模の降雨でも霞堤から越流した洪水流が住宅地へ流れ込み,浸水被害を助長する恐れがあるということが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り、流域治水の履歴が残っていると考えられる城原川霞堤周辺の堤内地において定方位板状地層採取ならびに霞堤からの氾濫数値シミュレーションを実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
定方位板状地層採取は、土地の地権者や利用者の同意を得て実施する必要があるため、関係者が数多く存在する嘉瀬川堤外遊水地においては調査自体が非常に困難である。したがって、嘉瀬川での調査を取りやめ、城原川に焦点を絞って調査を実施した。城原川では平成23年度に野越付近で調査を実施し、平成24年度に上流の霞堤付近の調査を行った。平成25年度は、過去2年間の調査結果を踏まえて、城原川の氾濫土砂堆積の予測ならびに氾濫水の挙動を総合的に検討するとともに、かつての流域対応による治水方式が,どのような治水思想に基づくものであったのかや,佐賀平野全体の河川群の中における位置づけ等について考察を加える.また,かつての流域対応の治水方式を如何にすれば現代に応用できるのかに関して検討するとともに,他の地域への適用についても考察する予定である.
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