研究課題
我々の身体が低酸素環境に暴露されたとき、個々の細胞は転写因子HIFの活性化を介してエネルギー代謝を“低酸素モード”に切り替え、限られた酸素を有効に利用しようとする(低酸素応答)。そのHIFもまたプロリン水酸化酵素PHDによって負に制御されているので、PHDは低酸素応答のON/OFFを決定しているスイッチ、すなわち“酸素濃度センサー”であると言える。PHDファミリー(PHD1~PHD3)のうち、生体内では主にPHD2が低酸素応答を負に制御している。このPHD2を欠損させたマウスの心臓において虚血再灌流モデルを作製したところ、対照群と比較して有意に心筋梗塞巣のサイズの縮小と心機能低下の抑制が確認され、心筋の虚血再灌流時にPHD2を阻害することが心筋梗塞の治療において有効である可能性が改めて確認出来た。心臓の前下行枝結紮(LAD ligation)モデル、体外型心灌流(Langendorf灌流)を用いた全心血流遮断モデルなど、各種虚血再灌流モデルを作製し、低酸素応答の活性化が虚血再灌流傷害へどのような影響を及ぼすかについて、主にエネルギー代謝の側面から解析している。
3: やや遅れている
初年度の、研究に用いる遺伝子改変マウスの米国からの搬入が搬出先のやむを得ない事情により大幅に遅れたた影響で、実験計画全体が後ろ倒し気味になっている。
最終年度は、メタボロームデータの解析などの時間のかかるデスクワークを後回しにし、虚血再灌流モデルの樹立と、サンプル回収に注力する。最終年度内に予定している大きな実験は終わらせる予定である。
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Mol Cancer Res.
巻: 11 ページ: 973-985
10.1158/1541-7786.MCR-12-0669-T
http://www.jst.go.jp/erato/suematsu/contents/achievement.html