脳梗塞、心筋梗塞といった、虚血再灌流傷害が関与する疾患の治療成績向上を最終的な目標として、虚血時に臓器内・細胞内で何が起こっているのかをまず掌握することを考えた。 虚血に陥った細胞では低酸素に対する応答反応(低酸素応答)が活性化するが、この低酸素応答によって細胞内のエネルギー代謝は「低酸素モード」となる。この低酸素応答を人為的に活性化させたマウスを用いて、マウスの心筋梗塞モデルを作製した。 この低酸素応答を活性化させたマウスにおける心筋梗塞モデルでは、対照群と比較して梗塞巣が優位に小さかったため、低酸素応答の活性化は心筋梗塞に対して保護的に働くことが確認できた。 低酸素応答による代謝の変動に、心筋梗塞後の生存率向上のカギがあると推測し、これらの低酸素応答を活性化したマウスの心臓を用いてメタボローム解析を行った。その結果、解糖系の著明な亢進・ペントースリン酸経路の活性化およびミトコンドリアのクエン酸回路(TCAサイクル)の活性低下を確認することが出来た。各酵素反応の活性化・活性低下、およびそれによる各代謝産物の増減を網羅的に把握することが出来た。今後、野生型マウスを用いた心筋梗塞モデルにおいて、本研究でピックアップした各酵素の阻害剤・活性化剤や代謝産物の効果のvalidation実験へと継続させていく予定である。
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