研究概要 |
ヒトのERV (HERV)は、ゲノムの~8%を占めるものの、塩基配列解析の結果からは転移能を持つコピーは存在しないと推察されている。しかし、転写活性のあるコピーはまだいくつも存在し、組織特異的にあるいはがん細胞特異的にHERVsの転写あるいはコードされているタンパク質が検出されており、ヒトの生命機能や病態(特にがん化との関連)におけるHERVsの重要性が示唆されている。本研究では、HERVのエピジェネティックな転写抑制機構の実体を明らかにし、その生物学的重要性を検討する。その第一段階として、SETDB1を条件的に欠損できるヒトES/iPS細胞の樹立を試みてきた。今年度は以下の実験を行った。 これまで、SIGMA社より購入したSETDB1のノックアウトに使うジンクフィンガーヌクレアーゼ (Zinc Finger Nucleases, ZFNs )を用いて、SETDB1のターゲティングを試みてきたが、陽性細胞の検出に至らなかった。そこで、新たな遺伝子破壊の方法として、CRISPR/Cas9とガイドRNAを用いた遺伝子改変技術を導入した。予備実験として、K562細胞を用いて、ノックアウト細胞の樹立が可能であるか検討したところ、目的とする遺伝子領域に有意に変異が誘導されていることが確認された。次に、条件的にSETDB1遺伝子を欠損できるように、loxP配列で挟まれたSETDB1発現ベクターを作成し、それをトランスポゾンベースのベクターに組み込んだ。以上、条件的SETDB1欠損細胞作製の為のプラスミドの調整を完了した。 今後は、これらのプラスミドをヒトiPS細胞に適用することで、目的とする細胞の樹立を開始する。
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