研究概要 |
コムギ由来eIF4A,eIF4B,eIFiso4E,eIFiso4G,eRF1,eRF3,poly(A)-binding protein (PABP)について,大腸菌を用いた発現系を構築し,発現の有無.可溶性,タグ精製の可否,他のタンパク質との共発現の効果などについて基礎的なデータを得た.このうち,eIF4A,eRF1については,比較的簡単に可溶性状態のタンパク質として大量に調製できることが判明した.eIF4B,eIFiso04Eについては,量が少ないものの調製できることが判った.eRF3については,全長の発現は難しいが,N末端80残基を欠損したものについては発現し,シャペロンとの共発現によって可溶性が改善することを見出した.それぞれのタンパク質の酵素活性については,今後検討の余地が残されている.一方,活性測定に必要なリボソームについては,二次元電気泳動システムの導入が遅れたため得られた試料を十分に同定できていない.eIF1,eIFIA,eIF5,eIF6については,可溶性発現の条件を検討したが,活性のある形で調製することができていない.eIF5Bについては発現が難しいため,保存されたドメインのみのタンパク質を作成するなどの検討が必要である.一方,cDNA配列が既知の8種類のアミノアシルtRNA合成酵素について,大腸菌を用いた組換え発現に着手した.また,NBRPで配布されているコムギcDNAクローンから,翻訳関連因子をコードすると考えられるものを独自に抜き出してリストを作成した.その結果,アノテーションが不十分なクローンも含めれば,翻訳に必要なことが知られている因子のcDNAは1種を除いて揃っていることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度実施計画では,必要な機器を導入した上で,リボソームを含む各因子の精製を行う予定であった.しかし,震災等の影響で補助金の交付が遅れ,また,交付される金額について確約が得られなかったため,やむを得ず,研究の順序を大幅に変更した.計画の前半部分(開始前複合体の調製に関するもの)については,年度終盤まで実質的に着手できず,順調に達成できたとはいえない.一方,後回しの予定だった,計画の後半部分(eIF4A,eIFiso4E,eIFiso4G,eRF1,eRF3,PABPについての研究)については計画以上に進んだ.また,24年度以降に着手する予定だったアミノアシルtRNA合成酵素についても,20種類中8種について,その組換え発現に着手した.
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