研究課題/領域番号 |
23310142
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研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
土岐 精一 独立行政法人農業生物資源研究所, その他部局等, その他 (80212067)
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研究分担者 |
雑賀 啓明 独立行政法人農業生物資源研究所, その他部局等, 研究員 (20435613)
遠藤 真咲 独立行政法人農業生物資源研究所, その他部局等, 研究員 (40546371)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 変異導入 / 人工制限酵素 / 植物 / ゲノム改変 / 非相同末端結合 |
研究概要 |
近年ゲノム上の標的遺伝子を特異的に切断する人工制限酵素の開発が盛んに行われており、これを利用すれば標的遺伝子を切断し、その修復過程において、標的遺伝子に変異を導入できる。我々はこれまでシロイヌナズナを材料に、植物において初めて、人工制限酵素を用いた標的遺伝子の変異導入に成功した。本研究では、植物に普遍的に適用可能な、標的遺伝子への変異導入技術を開発する。また、標的遺伝子切断後どのような変異が導入されるかは、切断部位へリクルートされる修復因子によって決まることがわかってきた。そこで修復因子欠損変異体において標的遺伝子の切断を行い、変異のスペクトルを広げる研究を行う。 まず、平成23年度に作出した人工制限酵素発現イネカルスから再分化個体を獲得した。しかしながら、その後代の個体においては標的配列に変異が導入されていないことが分かった。そこで、人工制限酵素自体や、人工制限酵素の発現を最適化するため、人工制限酵素発現ベクターの改変を行った。改良型人工制限酵素発現ベクターをイネに形質転換した結果、標的遺伝子に欠失等の変異を導入できることを明らかにした。また、非相同末端結合のイネ変異体では、シロイヌナズナでの報告と同様に、切断部位の削り込みが大きくなる傾向が観察された。次年度はこのことを確認したい。さらに、イネの内在性遺伝子について、新たに人工制限酵素を設計し、発現ベクターを構築した。一方、人工制限酵素の植物細胞内での活性を直接的に評価するため、イネのプロトプラストを利用した形質転換系の構築を試みたが、安定的なシステムを立ち上げるまでには至らなかった。そこで、シロイヌナズナの葉を材料に、Agro-infiltrationによる遺伝子導入系の開発に取り組み、イネのプロトプラストより安定的に遺伝子を導入できる可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イネにおいて人工制限酵素による変異導入に成功した。一方、人工制限酵素の酵素活性を評価するため、シロイヌナズナのAgro-infiltrationシステムを構築した。以上、成果は着実に得られており、進捗状況はおおむね順調であると判断した。また、今後の推進についても特に大きな問題はないと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
[汎用性の高い標的遺伝子への変異の導入技術の開発] これまでに、イネの人工制限酵素をイネカルスにおいて構成的に発現させることにより、標的遺伝子に欠失変異を導入できることを明らかにした。今後は、変異が導入された細胞をクローン化し、次世代にその変異を伝えるシステムの構築とその簡素化を目標に研究を進める。 [標的遺伝子改変における変異のスペクトルを拡大する研究] これまでに、シロイヌナズナの非相同末端結合修復の欠損株で、人工制限酵素を用いた変異導入により塩基の欠損が多くみられることを明らかにしている。今後は、そのシステムの汎用性を実証することを目標に研究を進める。
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