研究概要 |
研究協力関係にある機関(ドイツMPI-MP, スウェーデンUmea Univ)から提供された基礎代謝物のGC-MSスペクトル、およびMassBank上に登録されたGC-MSスペクトル(理研CSRS,大阪大学など)を総当りで比較し、研究機関毎のスペクトル処理方法の違いやバイアスを精査した。また同一代謝物におけるスペクトルどうしを比較し、スペクトルの類似性を判断する基準値の設定を進めた。この情報を元に、昨年度作成した統合スペクトルを評価し、最終的にはGC-MSの理論スペクトル構築を目指している。またこの情報とはイオン化法が異なるESIスペクトルとも比較をおこない、共通するピーク情報の抽出をおこなった。この情報はまだ論文にしていないが、26年度中には国際共著論文として報告する予定である。 また、スペクトルからの代謝物同定作業を迅速に進めるためのソフトウェア開発をおこなった。とりわけMultiple reaction monitoring (MRM) 法における代謝物同定の指標(昨年度実績を参照)を用いて、脂質の同定作業を効率化する手法をプログラム化している。グリセロリン脂質は多くの場合に標品がなく、精密質量だけからは同定できない。そこでMS/MS情報を考慮した同定ソフトウェアを作成した。極性頭部の違いによる大局的な溶出時間の設定と脂肪酸鎖長による溶出時間の遅れを組み合わせた理論溶出時間をもとに構造を絞りこみ、MS/MS情報から候補を選び出すソフトウェアを無償提供することができた。
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