研究課題/領域番号 |
23310144
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
林 哲也 宮崎大学, フロンティア科学実験総合センター, 教授 (10173014)
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研究分担者 |
三澤 尚明 宮崎大学, 産業動物防疫リサーチセンター, 教授 (20229678)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ゲノム解析 / polymicrobial diseases / メタゲノム解析 / ウシ趾乳頭腫症 / 比較ゲノム / 難培養細菌 / 次世代代シーケンサー |
研究概要 |
ウシ趾乳頭腫症 Papillomatous Digital Dermatitis(PDD)は難培養性細菌を含む複数の細菌による感染症で、新たな疾患概念であるpolymicrobial diseaseの1つである。本研究では、メタゲノム解析を中心としたアプローチにより本症原因菌群の同定とその生物学的性状を明らかにし、polymicrobial diseaseとしてのPDDの本質を解明し、得られたゲノム情報を基に、難培養菌の分離・培養法の確立や早期診断法やサーベイランス法などの開発を目指している。 本年度は、前年度に開始したメタゲノム解析を継続し、イルミナ MiSeq(ペアエンド及びメイトペア)15ラン分及びロッシュ 454 (4kbと8kbのメイトペア)5ラン分の配列(93.4 Gb)を取得した。次いで、ウシDNAをフィルタリングして得たイルミナ配列(11.9 Gb)を用いたアッセンブリ、454配列等を用いたscaffolding、scaffoldのクラスタリングを行い、100クラスターからなる約240 Mbの参照配列を取得した。16S rRNA配列を用いたポピュレーション解析については、99%に閾値を上げた再解析により精度を改良した。PDD新鮮検体の収集については、宮崎県内で口蹄疫終結後にPDDが集団発生していることが判明したため、メタゲノム解析による感染経路の解明等を優先的に実施することとし、40検体を収集した。 分離培養が可能なT. phagedenisについては、完全配列決定済みのYG3903R株とは分離地域・年の異なるPDD由来株(5株)とヒト由来標準株(1株)の概要配列を取得した。標準株については完全配列を得ており、PDD由来の1株(CH9株)のフィニッシュも終了間際である。これらの菌株とYG3903R株とのゲノム比較もほぼ終了し、論文作成作業を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メタゲノム解析では、93.4 Gbという当初に想定した以上の大量配列データを取得することができ、ウシDNAをフィルタリングしても約11.9 Gbの配列を取得できた。また、アッセンブリ、scaffolding、scaffoldのクラスタリングも順調に実施でき、100クラスターからなる約240 Mbの参照配列を取得できたことは大きな前進である。また、16S rRNA配列を用いたポピュレーション解析についても再解析により精度を改良できた。PDD新鮮検体の収集については、宮崎県内で口蹄疫終結後にPDDが集団発生していることが判明したために計画を変更し、メタゲノム解析による感染経路の解明等を優先的に実施することにしたが、既に宮崎県内から40検体を収集できた。一方、T. phagedenisについては、完全配列決定済みのYG3903R株とは分離地域・年の異なるPDD由来株(5株)とヒト由来標準株(1株)の概要配列を取得でき、標準株については完全配列を、またPDD由来の1株(CH9株)についてもフィニッシュ直前の段階まで到達した。これらの菌株とYG3903R株とのゲノム比較もほぼ終了している。以上の解析を優先して実施しているため、T. phagedenisの遺伝系の開発やPDDの動物モデル系の開発などが遅れているが、全体としては順調に研究が進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
基本的な研究の推進方策は、メタゲノム配列情報からの主要菌種のゲノム再構成など、当初の計画に沿って進める。ただし、宮崎県内で口蹄疫終結後にPDDが集団発生していることが判明したために当初計画を変更し、そのメタゲノム解析による感染経路の解明等を優先的に実施することとする。そのため、宮崎県内でのPDDサンプル収集、宮崎県内に移入されたウシ個体の出生・育成地域でのPDDサンプル収集、多数検体のメタゲノム解析を効率良く実施するための細菌DNA濃縮法(ウシDNA除去法)の改良・開発をまず実施し、その後、感染経路等の解明を目指したメタゲノム解析を実施する。
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