研究課題/領域番号 |
23310152
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
石野 良純 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30346837)
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研究分担者 |
跡見 晴幸 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90243047)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 超す熱性アーキア / DNA複製 / 生体高分子 / レプリソーム / DNA修復 |
研究概要 |
T.kodakarensisゲノム上に存在する2種のpcna遺伝子の産物の機能解析を進めた。また分担者によりこれらの遺伝子破壊株の単離が試みられたが、PCNA2に対する破壊株は得られ、 PCNA1は得られなかったので、PCNA1は生育に必須であると予想された。PCNA2の破壊株の表現形を詳細に調べた。PCNA2が欠失した変異体はDNA修復異常が観察されるかと予想されたが、これまでの実験結果は、紫外線や変異原化学物質に対する感受性において野生株と比較して差が観察されていない。PCNA1, PCNA2と特異的に結合するタンパク質をスクリーニングした結果、 PCNA1とは異なるタンパク質が結合することがわかり、今後の研究が期待できる。DNA複製開始やフォークの進行にとって重要な GINS複合体を T. kodakaraensis 由来のものと、Thermoplasma acidophilum由来のものについて比較解析した。これらの GINSは Mcmヘリカーゼと相互作用をすることが分かったが、さらに RecJ様の配列を有するタンパク質が安定に複合体を形成することも発見した。また、T. acidohilumは Cdc6を二つ有しており、そのうち Cdc6-2がMCMヘリカーゼを促進すること、そしてその促進効果はGINSとの間で相乗的であることを発見した。アーキア細胞の中でもDNA複製機構は多様性を示すことが証明された。 さらに、ゲノムDNAの安定性を維持するための DNA修復機構には多くのヌクレアーゼが関与することが想像されるが、超好熱性アーキア由来の新規ヌクレアーゼを発見し、PfuExoI, EndoQ というように命名した。これらの酵素は特許出願するとともに、基礎的性質解析と遺伝子工学的試薬としての応用開発研究へ進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超好熱性アーキアのDNA複製、修復に関与するタンパク質因子、酵素に関して、生化学手法とと遺伝学的手法を取り入れた、きっちりした研究の進行が実現できている。これまでに実績のあるテーマについて、さらに進展させる共に、新規酵素の発見など新たな展開もできている。新規酵素については特許も出願できている。新規な発見に関しては、出願まで対外発表を控えた。
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今後の研究の推進方策 |
新たに発見したヌクレアーゼである PfuExo I, Endo Q, NucS の3種について、その構造と機能を詳細に解明するとともに、細胞内での具体的な役割を突き止めるべく、研究を展開したい。これらの酵素について、高度精製法の確立、結晶化、X線構造解析、生化学的酵素解析、遺伝子破壊による変異体解析等を精力的に進める計画を実行する。これらの研究を通して、アーキアのあらたなDNA修復系の発見につながり、またその成果を応用した新技術開発が期待でかる。
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