研究課題/領域番号 |
23310153
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
戸嶋 一敦 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (60217502)
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キーワード | タンパク / 光分解 / インフルエンザ / ノイラミニダーゼ / エイズ / HIV-1プロテア / フラーレン / シアル酸 |
研究概要 |
「標的タンパク及び糖鎖を光分解する生体機能分子の創製と細胞機能制御への応用」と題した本研究課題の初年度として、疾病関連タンパクを選択的に光分解する新たな生体機能分子を創製した。ノイラミニダーゼ(NA)は、インフルエンザウィルスの表層に局在する酵素であり、インフルエンザウィルスの生体内増殖に深く関与していることから、インフルエンザのドラッグターゲットとして注目されている。これまでに、タミフルなどの抗NA薬が開発され、臨床において広く利用されている。しかし近年、薬剤耐性ウィルスの出現から、耐性ウィルスの発現を危惧する必要の無い新たな薬剤の開発が強く求められている。本研究では、NAの天然型リガンドである酸性糖シアル酸をおとり分子として用い、シアル酸と当研究室で見出した長波長紫外光の照射下、タンパクを光分解するアントラキノン(AQ)を連結したハイブリッド分子を創製した。さらに、本ハイブリッド分子が、薬剤耐性の有無に関わらずNAを光分解し、その酵素活性を不可逆的に阻害することを見出した。また、エイズの原因物質であるHIV-1プロテアーゼを光分解する生体機能分子を創製した。すなわち、フラーレン-糖ハイブリッド分子をデザイン、化学合成し、本ハイブリッド分子が、HIV-1プロテアーゼを効果的かつ選択的に光分解することを見出した。また、本ハイブリッド分子が、光分解により、HIV-1プロテアーゼの酵素活性を不可逆的に阻害することを明らかにした。さらに、本ハイブリッド分子が、エイズウィルスを感染させた白血病細胞及びヒト末梢血単核球細胞を用いた系において、光照射下、これら宿主細胞内でのエイズウィルスの増殖を抑制することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、「標的タンパク及び糖鎖を光分解する生体機能分子の創製と細胞機能制御への応用」を目的としているが、本年度において、インフルエンザ及びエイズ関連タンパクを光分解する生体機能分子を設計、合成し、これらが、酵素及び細胞レベルで効果的に機能することを示せたため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の推進方策として、引き続き疾患関連タンパクを選択的に光分解する生体機能分子の設計、合成及び機能評価を行うことに加え、疾患関連糖鎖(シアル酸やKDOなど)を標的とし、これらを標的選択的に光分解する生体機能分子の設計、合成を行い、機能評価を行うことで、試験管内のみならず、細胞系において有効に機能する新たな生体機能分子の創製を目指す。 尚、研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での大きな問題点は現時点ではない。
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