研究課題/領域番号 |
23310157
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
飛田 成史 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30164007)
|
研究分担者 |
吉原 利忠 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10375561)
|
研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2015-03-31
|
キーワード | 酸素プローブ / イリジウム錯体 / りん光 / HeLa細胞 / ミトコンドリア |
研究概要 |
平成24年度は特定のオルガネラに集積するイリジウム(III)錯体酸素プローブの設計と合成を行った。オルガネラとしては、呼吸による酸素消費の場として最も重要なミトコンドリアを選んだ。ミトコンドリアの内膜は負の膜電位を有するため、非局在化したカチオン性を有するtriphenylphosphonium (TPP)cationがミトコンドリアへのキャリアとして優れていることが知られている。そこでTPPを結合したイリジウム錯体BTP-MitoとBTQ-Mitoを合成し、HeLa細胞への取り込みと局在を発光顕微画像から検討したところ、どちらの錯体もミトコンドリアに選択的に集積する性質を有し、培養器の酸素分圧に依存して発光輝度が変化することが確認できた。さらに、o-phenanthrolineを配位子に有するカチオン性イリジウム錯体を合成し、HeLa細胞への取り込みと局在を調べたところ、BTP-Mito、BTQ-Mitoと同じく細胞内に効率よく取り込まれ、ミトコンドリア集積性を有することが明らかになった。o-phenanthrolineを配位子に有するカチオン性イリジウム錯体あるいはBTQ-Mitoをプローブとして、HeLa細胞に取り込まれたイリジウム錯体のりん光寿命測定を行った。励起光としてNd:YAGレーザーの第2高調波(532 nm)を顕微鏡に導入し、時間相関単一光子計数法に基づいて発光減衰を計測した。どちらの錯体も細胞中でのりん光寿命は2成分となり、培養器の酸素分圧が20%のときに比べて2.5%の低酸素状態では両寿命ともに顕著に増加した。現在、酸素濃度の定量化に向けてcalibrationの方法を検討している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミトコンドリアに集積性を示すイリジウム錯体の分子設計について、一定の指針を得ることができ、ミトコンドリアの酸素濃度をリアルタイムで検出するための発光プローブを開発することができた。また、合成したイリジウム錯体の光物理特性、細胞親和性、細胞内局在、酸素応答性等を明らかにすることができた。この設計指針を使うことにより、吸収・発光波長の異なるミトコンドリア集積性イリジウム錯体を合成することが可能になった。
|
今後の研究の推進方策 |
すでに顕微鏡下で細胞内からの発光の寿命を取ることに成功し、発光寿命が酸素応答性を示すことも明らかにできている。しかし、生細胞内ミトコンドリアの酸素濃度を定量するには、得られたりん光寿命について酸素濃度に対するcalibrationの方法を確立することが今後の課題として残されている。
|