研究課題/領域番号 |
23310163
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
梅澤 一夫 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (70114402)
|
研究分担者 |
清水 史郎 慶應義塾大学, 理工学部, 専任講師 (30312268)
尾崎 倫孝 北海道大学, 医学研究科, 特任教授 (80256510)
斉藤 毅 慶應義塾大学, 理工学部, 助教 (80609933)
|
キーワード | 転移 / 卵巣癌 / NF-κB / DHMEQ / DTCM-glutarimide / 探索プローブ / 標的タンパク質 / 光プローブ |
研究概要 |
卵巣癌細胞の浸潤を抑える安全な医薬を発見した。ATP感受性K+チャネル(KATPチャネル)はあらゆる組織に発現し、インスリン分泌をはじめとする多くの生理機能に関与する。本研究で用いたKATPチャネルブロッカーglybenclamideは経口糖尿病治療薬として広く用いられている。この医薬がヒト卵巣明細胞腺癌ES-2細胞の遊走、浸潤を抑制することを見出した。KATPチャネルブロッカーが結合するSUR2Bをノックダウンすると、薬剤感受性の低下が見られたことから、KATPチャネルブロッカーがSUR2Bに結合し浸潤を抑制することが示された。プロテオーム解析結果からPDGF-AAに着目し、この因子が浸潤のmediatorで、glybenclamideはこの分泌を抑えていることがわかった。PDGF-Aをノックダウンすると浸潤能の低下が見られ、また、glybenclamideにより抑制された浸潤能がPDGF-AA刺激により回復した。以上の結果より、KATPチャネルブロッカーはPDGF-AAの分泌阻害を介して浸潤を抑制することが示され、KATPチャネルが卵巣癌転移抑制の新たな標的となり得ることが示された。 一方、浸潤抑制物質DTCM-Gが長時間作用させるとNF-κB阻害剤として働くことを見出した。すでにNF-κB阻害剤が卵巣癌抑制することを見出している。(ここまで梅澤、清水) ビオチンを結合させ、DTCM-Gの標的分子探索プローブを合成した。(斉藤) 高転移能を有する胃癌細胞株にluciferaseを安定導入し、マウス腹腔内胃癌播種モデルを作成した。生体イメージング法により、DHMEQが有効に胃癌の播種・転移を抑制することを示した。また、分泌型ルシフェラーゼを恒常的に分泌する膵癌細胞株AsPC-1-Glucを樹立し、現在、同じプローブを卵巣癌細胞株ES-2細胞に発現させている。(尾崎)
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新しい安全な卵巣癌腹腔内転移抑制剤の候補が糖尿病薬の中から見出された。さらにDTCM-Gの浸潤抑制機構が解明されたこと、およびビオチン付きプローブが合成されたこと。in vivoでは卵巣癌ではないが、胃癌で腹腔内転移のバイオイメージングができたこと、がプラス点。卵巣癌in vivoモデルがまだなのがマイナス点。
|
今後の研究の推進方策 |
天然から遊走・浸潤・転移抑制物質を探索してゆく。さらに、浸潤や転移に関与する新しいシグナルを転移関連タンパク質の翻訳語修飾に注目して、見出してゆく。このことは新しい腹腔内転移阻害物質の分子標的が得られるようになる意義がある。(梅澤、清水)DTCM-GがNF-κBを阻害し、細胞浸潤抑制を示すので、その標的を見出すさらに新しいプローブもデザイン・合成する。(斉藤)その一方で、まだできていない卵巣癌細胞へのluciferaseプローブ導入細胞を樹立して、バイオイメージングができるようにする。(尾崎)
|