研究課題/領域番号 |
23310163
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
梅澤 一夫 愛知医科大学, 医学部, 教授 (70114402)
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研究分担者 |
清水 史郎 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (30312268)
斉藤 毅 筑波大学, 学内共同利用施設等, 助教 (80609933)
尾崎 倫孝 北海道大学, その他の研究科, 教授 (80256510)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | DHMEQ / Exo-ene EQ / DTCM-glutarimide / 分子デザイン / 浸潤 / 転移 / アノイキス / メラノーマ |
研究概要 |
H23年度に光るがん細胞を用いてDHMEQは腹腔内転移モデルをin vivoで抑制することを示した。H24年度、DHMEQのNF-kappa B阻害機構として、RelBを阻害する際、DNAへの結合を阻害するだけでなく、その安定性を低下させること、およびimportinとの結合親和性を低下させて核移行を阻害することを報告した。また、共同研究で、膵がん細胞の肝への転移を抑制することを示した。さらに、今後のがん治療に重要とされているがん幹細胞の抑制について、DHMEQはがん幹細胞に選択的に寒天内増殖抑制をすること、動物実験で乳がん幹細胞の増殖を抑制することを報告した。DHMEQは動物実験で毒性がきわめて少なく、多くの抗がん・抗炎症活性を示し、医薬としての開発が進められている。一方、構造にepoxideを有し、これはcysteine SHとの結合に必須であるが、生体分子との余計な反応ももたらす。そこでepoxideのかわりにexomethylene carbonylを有するDHMEQ誘導体Exo-ene EQを分子デザイン・合成した。Exoene EQはDHMEQと同等の活性でNF-kappa Bを阻害し、サイトカイン分泌を阻害した。他方、DTCM-glutarimide (DTCM-G)は間接的NF-kappa B阻害剤であり、高転移性マウスメラノーマB16-F10細胞の浸潤を阻害することを見出して報告した。さらに転移抑制に重要な、足場依存性細胞死であるアノイキスを誘導することを見出した。(以上、梅澤)その他、DHMEQはがん細胞の接着に関与するgalectin-3 binding proteinの発現を抑制することを見出した。(梅澤、清水)DHMEQが炎症性大腸炎の改善にも有効で、安全なことを動物実験で示した。(尾崎)Exo-ene EQの大量合成を検討した。(斉藤)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は新しいNF-kappa B阻害剤Exo-ene EQを新規デザインして合成し、活性があることがわかった。この化合物はDHMEQの誘導体であり、腹腔内転移を抑制することが期待される。そしてepoxideがないことから、より生体内で安定なことが期待される。また、浸潤・転移の研究に多く用いられるマウスメラノーマB16-F10細胞を用いて、私たちの発見したDTCM-glutarimideが抑制効果を示した。一方、Exo-ene EQの合成はおくれて、大量につくることができなかった。総合しておおむね順調と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Exo-ene EQが卵巣がん細胞の浸潤・転移に有効なことを示す。さらに新しい浸潤・転移阻害物質を微生物二次代謝産物から探索、発見する。そして、より多くの腹腔内転移のイメージングの実験をして、動物実験で活性のある物質の探索を行う。
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