研究課題
本研究の目的は、北海道における絶滅危惧種シマフクロウの保全をめざして、地域個体群の遺伝的多様性を評価すること、さらに、細胞・遺伝子資源の保存体制を確立することであった。本年度は、シマフクロウ集団の病原体に対する免疫力が低下しているかどうかを明らかにするため、免疫に関与する主要組織適合遺伝子複合体(Major histocompatibility complex: MHC)を指標にして集団遺伝学的解析を行った。50年以上前から北海道各地で採取され保存されてきたシマフクロウ約170個体のサンプルについてDNA抽出を行い、遺伝子増幅法と次世代シーケンサーを用いてMHC class II遺伝子座の遺伝子型を決定した。その結果、19種類の対立遺伝子が検出された。地域集団間の多様性を比較すると、遺伝的に大きく分化していることが明らかとなった。さらに、時代経過と比較すると、個体数が減少した時期から多様性が減少してきたことが示唆された。このMHC遺伝子分析の結果は、短期間における遺伝的浮動が、長期間の進化において維持されていた平衡選択の効果に大きく影響を与えたことを示している。さらに、この機能的遺伝子の結果は、昨年まで分析してきた中立的な進化を示すと考えられるミトコンドリアDNAやマイクロサテライトの分析結果と同様に、北海道集団における遺伝的多様性の低下を示すものである。一方、継続して採取されたシマフクロウの血液からゲノムDNAを精製し、保存することができた。これまでの成果により、遺伝的多様性の情報とともに、生きた培養細胞および血液・組織等から抽出したゲノムDNAを長期保存・活用するシステムの基盤を確立することができた。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件)
Zoological Letters
巻: 1 ページ: 13
10.1186/s40851-015-0013-4
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