研究課題
侵略的外来種による植生の破壊や変質が問題となっている小笠原諸島では、外来生物の駆除に加えて、森林生態系の修復・再生を促進するため、在来樹の植栽を伴う保全事業が検討・実施されている。しかしながら海洋島の植物は、島内の集団間で遺伝的に分化するなど、複雑な遺伝構造が認められることが多い。従って、このような地域における植栽は、長い歴史をかけて形成されてきた集団構造を撹乱するおそれがある。本研究は、小笠原諸島における在来樹種の集団遺伝学的解析や植栽シミュレーションを行い、進化的な観点から重要な地域における植栽の適否や手法に関するガイドラインを提案し、適正な保全・自然再生計画に直接的に貢献することを目的とする。平成23年度は、小笠原在来の広分布種9種を第一次候補種として、遺伝マーカー(核DNAマイクロサテライト)の開発を行った。タコノキやモモタマナ、テリハボク、ヒメツバキ、シマホルトノキ、ヤロード、センダンは、目標としていた10遺伝子座以上で多型性のある有効なマーカーを開発することができた。シャリンバイとアコウザンショウは、マーカーを設計したが多型性の確認はまだ出来ていない。これらの種群について、小笠原諸島全域から様々な環境を網羅するように集団を選定し、DNA抽出用の葉サンプルを収集した。マーカー開発が終了した種群は、各個体の遺伝子型の決定を進めている。
2: おおむね順調に進展している
当初目標としていた9種のうち7種について有効なマーカーを開発し、父島列島と母島列島の全域から集団サンプリングをすることが出来た。また収集したサンプルの半分以上は既に遺伝子型を決定しており、ほぼ目標は達成したと考えている。
当初目標としていた植生や地形などの情報をもとにした環境類型区分は、GISソフトウエアの扱いに不慣れなためにやや遅れているが、現在、GISの専門家からの指導を受けながら技術的な問題を解決するよう努めている。
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American Journal of Botany
巻: 99 ページ: E84-e87
10.3732/ajb.1100391