研究課題/領域番号 |
23310168
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
山口 裕文 東京農業大学, 農学部, 教授 (20112542)
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研究分担者 |
副島 顕子 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (00244674)
保田 謙太郎 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (00549032)
大野 朋子 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (10420746)
梅本 信也 京都大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (60213500)
三村 真紀子 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), その他 (60451689)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 生物文化多様性 / 生物活用 / 栽培化症候 / 地域外遺伝子 / 福祉農学 |
研究概要 |
7月、10月および1月に研究検討会を開催し、研究協力者(中田政司氏、大澤良氏、和田文緖氏)によるキク、サクラソウ、香源植物にみられる多様性と野生種との関係に関する招待講演と合わせて分担者の研究成果を討論した。生態系影響の項目を盛り込んだ東アジア原産観賞植物の生態的特徴のリストアップを継続するとともに民家庭園、寺社とその周辺で野生種との共存状態を調査し、ナデシコ、ヒサカキ、シオン等について多型解析に必要な分析素材を収集するとともに、野生種と栽培種の形態的差異を調査し、アロメトリー解析を行った。また、分析試料収集と併せて、国内(紀伊半島、沖縄、西九州)および国外、(中国・浙江省、タイとインドネシア)の民家庭園において東アジア原産観賞植物の活用状況を調査し、半栽培での生産状況を調査した。 観賞植物の栽培に伴う遺伝子拡散および侵略は野生種・栽培品種間の花粉流動だけでなく、雑種品種からの潜在的地域外遺伝子の影響が示唆された。観賞植物にみられる栽培化症候にはナデシコ類では、花弁の形状変化と草姿の変化が認められた。常緑性の観賞植物の内、枝物では半栽培状態での生産が認められ、ヒサカキでは、紀伊半島で二種類の管理様式で生産され伝統的知識を反映した技術基盤が形成されていたが、中国では茶栽培の技術が転用されており、未熟な状態であった。北東アジア原産の観賞植物の内、キク、クチナシ、ナンテン、センリョウ、マンリョウなど栄養繁殖および種子繁殖で野生化の可能性を持つ種が東南アジアの民家庭園で福祉活用されており、将来の生態系リスクとなると判断された。農作物と比較しつつ、栽培化と野生化の概念を整理し、本企画の構想の骨格を林・山口編『バイオセラピー学入門』で公表したほか、分担者および連携研究者(宮浦理恵、鈴木貢次郎)の成果をそれぞれで、図書、論文および学会発表として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
生態調査および形態的解析では順調なものの、ヒサカキではDNA抽出、シオンでは多型検出が難しいなどの困難があり、分子解析が十分に進まなかった。フィールド調査では、当初予定した中国での調査とサンプリングが政情不安のため実施できず、亜熱帯地域の民家庭園で栽培下での遺伝子拡散の可能性に関する調査を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、インベントリーを拡大するとともに、研究協力者との講演会をとおして、保全情報を収集する。DNA調査では、ナデシコ類、アサガオ類およびヒサカキについて、更に、解析を加えるとともに、対象をシオンからオキナグサに変更するなどで対応する。半栽培の技法について更なる聞き取り調査を実施し、文化多様性との関わりを検証するとともに、野生化と栽培化概念を深化させる。
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