本研究は、外来および野生動物に流行する感染症および国内外の病原体のリスクプロファイリングを行い、その対策を確立し、我が国の生態系および生物多様性の保全を目的とする。本年度は研究最終年度に当たるため、学会発表・論文公表を積極的に行うとともに、以下の研究を行った。 (1)両生類の感染症 ①カエルツボカビ(Bd):モニター動物を採取適期に28都道府県から859匹を採取、19都県266匹(31%)よりBdを検出した。採取地ごとの検出率は4.0~48.6%で、日本の自然界にBdは広く分布していることを明らかにした。②ラナウイルス(RV): RV感染症の流行を解析し、野生下ではウシガエル幼生のみにRCV-JPによる大量死が生じ、動物の生息密度が流行のトリガーになることを推定した。また、飼育下では輸入動物が国内未確認RVによって大量死していることを見出し、輸入動物の病原体キャリアーとしてのリスクを明らかにした。RVの国内浸淫状況をウシガエル幼生とヌマガエルを対象として検討し、陽性率は前者では低く、後者では、調査期間中に激増して、かつ検出地域の拡大が確認された。(2)哺乳類、鳥類の感染症 飼育下の各種動物(サル類、鳥類)におけるエルシニア症(人獣共通感染症)の流行阻止の対策として、リコビナントワクチンを作製し、有効性を皮下および経口投与によって検証した(特許出願日:平成26年5月7日 出願番号:特願2014-96323)。サル類においては致死的パスツラ症、トキソプラズマ症および美麗食道虫症を見出し、各疾患に関して、治療・除菌を含めた流行阻止の対策を検討・報告した。CDCよりアライグマ回虫相当の病原性を有すると警告を発せられたキンカジュー回虫に関して、本種の輸入実態と感染率と各種動物への病原性を明らかにした。さらに、アライグマ回虫と近縁な新種であることを特定し公表し、効果的な駆虫法を確立した。
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