研究課題/領域番号 |
23310172
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
パイチャゼ スヴェトラナ 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 研究員 (10552664)
|
研究分担者 |
宮下 雅年 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (90166174)
WOLFF David 北海道大学, スラブ研究センター, 教授 (60435948)
玄 武岩 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (80376607)
長野 督 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (30312408)
P・A SEATON 北海道大学, 留学生センター, 教授 (70400025)
中地 美枝 北海道大学, スラブ研究センター, 研究員 (90567067)
兎内 勇津流 北海道大学, スラブ研究センター, 准教授 (50271672)
|
キーワード | 帰国者 / サハリン / 北海道 / 東アジア / 多文化共生 / 移民 / ボーダー / 記憶 |
研究概要 |
北海道は特殊なマイノリティグループが混在し、定住している。なかでも、サハリン帰国者集団は高齢化進み、放置していれば、50年以上も日・露・韓の3つの国、3つの文化、3つの言語を生きてきたという貴重な経験が跡形もなく消えてしまうという可能性が高い。今年度は、札幌の「中国・サハリン帰国者センター」や「ロシア語継承学校」など通じて帰国者と連絡を取り、個別の聞き取り調査を始めた。こうした調査によって明らかになったサハリン帰国者の特異な経験を現在まとめつつある。たとえば、同じ帰国者であっても、各世代によってアイデンティティの維持や言語使用の状況がはっきりと異なることが明瞭になった。このような調査結果は、どのように帰国者集団の生活や教育を支援するか、今後の市民運動に重要な示唆を与える。同時に、全体的な北海道多文化共生政策にもよい影響を与えると期待できる。この調査のほかに、7月、12月、1月には「サハリン・樺太史研究会」などとともに研究会を開き、日・韓・露の政治関係史や現在のサハリンおよび北海道の多民族共生状況、言語とメディアの諸問題について議論を重ねた。その結果、本プロジェクトを核として他の研究集団との連携が深まり、研究ネットワークを強固にすることができた。今年度の本プロジェクトの研究成果については、この秋開催の BRIT (Border Regions in Transition)の国際学会で発表する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)調査対象であるサハリン帰国者とコンタクトが出来て、研究目的を果たすためのインタビューがすでに行われている。(2)国内・国外の研究者集団とネットワークが出来て、本研究課題を進化/深化させる道筋が明確になっている。
|
今後の研究の推進方策 |
次年の主なテーマ: 1.「移動しなかった移民」である。言いかえると、東アジアにおける統治や国境が変わったことによって「移民」になってしまった民族グループの考察は研究の目的である。 2.サハリンから帰国した日韓にまたがる多文化・多言語的な家族に注目しつつ、しかしそれらを引き裂かれた離散家族としてよりも越境的な生活空間を実践する存在としてとらえ、「本国帰国者」という人たちの多層的なアイデンティティの可能性を探ることにしたい。 3.以上のような帰国者の多層的なアイデンティティを明らかにすることによって、 東アジアにおける新しい人道的・文化的な国際関係の在り方を示す。
|