研究課題/領域番号 |
23310183
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
川野 徳幸 広島大学, 平和科学研究センター, 准教授 (30304463)
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研究分担者 |
大瀧 慈 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (20110463)
小池 聖一 広島大学, 大学院・国際協力研究科, 教授 (70274024)
原田 結花 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (50379848)
原田 浩徳 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 講師 (10314775)
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キーワード | カザフスタン / セミパラチンスク / 被ばく被害 |
研究概要 |
本年度の調査研究実績の概要は以下の通りである。 1.2011年8月、セミパラチンスク地区のタブリヤ村、ジェラシモフカ村、プリヴォルノエ村において、各村住民を対象にアンケート調査及び証言収集調査を実施した。研究分担者・連携研究者、現地研究協力者と協議の結果、従来の設問を踏襲した。その結果、155件のアンケート及び123点の証言を回収した。 2.2007年までに収集した944人分の証言を用い、セミパラチンスク地区住民の核実験に起因する認識構造の一端を検討した。分析の結果、住民の認識は(1)核実験当時の記憶(2)現状に対する不満・不安の二つに大別されることが分かった。(1)に関しては、「キノコ雲」、「衝撃波」、「(閃)光」、「地面の揺れ」、「屋外避難」が記憶の中で特に重要な要素であった。(2)に関しては、実験場閉鎖後20年が経過した現在でも、自身や家族の健康不安と対峙しなければならない現状が示唆された。 3.2005年4月実施の朝日新聞社「被爆60年アンケート調査」の自由記述式回答(証言)に注目し、原爆被爆者の体験記・メッセージの核心部分について、被爆区分別での特徴を検討した。その結果、原爆被爆者が原爆体験を語る際、それぞれの被爆区分によって、重点の置き所が異なることが明らかになった。 4.チェルノブイリ原発事故被災者のインタビュー記録をまとめ発行した。 5.放射線被ばく後に発症するMDSではRUNX1/AML1遺伝子変異が高頻度に見られ、セミパラチンスク核実験場周辺住民やチェルノブイリ原発事故被ばく者のMDSにもRUNX1変異が高頻度に認められることを明らかにした。 以上の研究成果は、論文、学会等で発表した。また新聞等のメディアでも頻繁に取り上げられた。 6.現在、2011年収集のアンケートを集計している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた調査研究は次の通りであった。(1)セミパラチンスク地区でのアンケート調査・証言収集、(2)従来収集してきたアンケート・証言の解析、(3)チェルノブイリ原発事故被災者へのインタビュー、(4)広島・長崎原爆被害との比較検討、(5)セミパラチンスク被災者の遺伝子解析。何れも当初の計画通り進んだ。(3)に関しては、2011年9月にインタビューを実施した。当初インタビュー実施のみを予定していたが、2010年調査までのインタビュー記録をまとめ発行することが出来た。この点は当初の計画以上のものであった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、カザフスタン共和国・セミパラチンスク地区の被ばく被害の実態を総合的に解明することである。そのために、今後も、アンケート調査・証言収集とそれらの解析、被災者のDNA解析、広島・長崎原爆、チェルノブイリ原発事故の各被害との比較検討を行う。本年度の研究は、当初の予定通り、滞りなく進んだ。今後も本年度同様、調査研究を推進していく。本研究の分担者、連携研究者、そして海外の研究協力者とは密に連携をとっている。今後の調査研究に何ら支障はない。
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